お互いの価値観のズレ、約束を守らない、感謝の言葉どころか否定的なことばかり言われる等々、夫婦喧嘩の種はそこかしこに転がっています。
相手に改善してほしいところや本音を伝えることは、長い時間を共にする夫婦にとって避けられない事柄ですが、もしそれを子供の面前でしているとしたら…。
子供の脳は強いストレスを受けるとどんどん変化していくことが研究により証明されています。
今回は夫婦げんかが子供に与えるストレスについて焦点を当てて考えていきます。
ストレスが引き起こす子供の脳の変化
虐待を受けて育った子の脳はそうでなかった子に比べて小さい、という話を聞いたことがある人もいるでしょう。
過酷な状況にうまく適応できるよう無意識のうちに脳が変化したと考えられており、受けた虐待によりその変化する部位や大きさに違いがあるそうです。
3つのタイプ
福井大学教授の友田明美さん(小児発達学)の研究によると、脳の変化にはいくつかのタイプがあるということがわかったそうです。
①激しい体罰による前頭前野の萎縮──幼少期に激しい体罰を長期にわたり受けると、感情や理性をつかさどる「前頭前野」が約19%萎縮する。
②暴言虐待による聴覚野の拡大──幼少期に暴言による虐待を受けると、会話や言語をつかさどる「聴覚野」の一部が約14%拡大する。
③両親のDV目撃による視覚野の萎縮──幼少期に頻繁に両親のDVを目撃すると、視覚野の一部が約16%萎縮する。
https://psych.or.jp/publication/world080/pw05/より抜粋
実際に自分が被害に遭っていないのに、それを目撃しただけでも脳に変化が起こることが証明されています。
たかが夫婦喧嘩、されど夫婦喧嘩
さて、話を夫婦喧嘩を目撃している子供にあてていきたいと思います。
なぜ子供の目の前で喧嘩をすることが好ましくないかは先程の研究結果からも明白です。
「夫婦喧嘩を子供に見せると危険なんて、そんなオーバーな…」と思われているとしたら、ちょっと待った!!
こんな法律がありますよ!
児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力(配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)の身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいう。)その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。
児童虐待防止法の第二条「児童虐待の定義」の四より抜粋
一体どういうこと??
解説すると、結婚している夫婦、または籍は入っていないけど事実婚状態の夫婦どちらか一方がもう片方に、暴力や暴言などをはたらき、それにより子供が心に・・・・
あーややこしい!
つまり、激しい夫婦喧嘩を子供の前で展開することは児童虐待に該当する、ということです。
殴る、蹴る、物を投げる、「クズ」「死ね」「役立たず」などの暴言も、例えそれが子供に向けられたものでなくても立派な「虐待」になり得るのです。
脳にダメージを負った子供は…
親が親に暴力暴言を日常的に繰り返し、それを身近で見てきた子供の脳は一部が16%委縮すると研究結果で証明されていましたね。
それだけ子供の心にストレスを与えているということに他なりません。
では、この委縮が起こると子供にどのような変化がみられるのでしょうか。
委縮後懸念される病
先程の研究をされた友田先生によると、脳にダメージを受けた子は
・非行
・うつ、摂食障害
・統合失調症
などの病を引き起こす、または悪化させる可能性があることが明らかになっているそうです。
☆友田先生の著書☆
さらに詳しく知識を深めたい方はぜひご覧ください。
じわりじわりと刷り込まれる記憶
夫婦の激しい喧嘩を見ながら育った子供は「あんなふうになりたくない」と思っていたとしても言動が似てしまうことが往々にあるようです。
例①
夫からの暴力暴言に耐えきれず、小学生だった息子さんを連れて離婚に踏み切ったお母さん。
息子との穏やかな生活を手に入れたかと思いきや、子供の年齢が上がるにつれて別れた夫の口調を彷彿させるかのような暴言を息子が吐くようになったそうです。
「別れたのにまだそばにいる感じがしてすごく嫌な気分になる。もっと早く別れていればここまでの事態にはならなかったかもしれない」と悔やんでいるそうです。
夫婦喧嘩を目撃する機会が多かった子供にその悪影響が出始めるのは11~13歳頃が一番多いことも研究からわかっており、中でも身体的暴力を目撃し続けた子供よりも、言葉の暴力を目撃し続けた子供の方が脳のダメージが6倍も大きいことが問題視されています。
例②
夫からの暴力暴言に苦しんでいた奥さん。妊娠してもそれはおさまらず、出産後も当たり前のように続いていました。
そんな日々の癒しとなっていたのは生まれてきた娘だったのに、成長に伴い夫の口調や表情をし始めるようになり、「娘が夫のようになるのでは…」とお母さんは危機感を抱いてすぐさま心のクリニックへ。
オムツはとっくに取れているのにおもらしが多かったり、夜中に突然泣き叫んで寝付けなくなるなどの症状が現れ始めているそうです。
子供の友達の例
娘の友達にものすごく口の悪い女の子がいます。いつも偉そうで誰にでも「お前○○しないとぶち殺すからな」と言っているようで、常にトラブルメーカーでした。
しかしその子が年明けにものすごく物腰が柔らかくなり、言葉も普通になっていたそうで…。子供の話だと「あの子は自分の家じゃないところから学校に来ることになったんだって」とのこと。
「何それ?」と思っていたところ、家庭環境があまりよくなく保護されたらしい、という話を耳にしました。
だからあんな態度だったのかな。いつも親がそんなことばかり言ってたのかな。と、心苦しくなりました。
じゃあ無視ならいいの?
夫婦がお互い無視しあえば大丈夫なんじゃないの?と考えられる方もいらっしゃるかもしれません。
実際、喧嘩をした後何日も口を利かないご夫婦も多いようですし、珍しいことではないのかもしれません…が、冷戦状態の父母に挟まれた子供達にも心理的なリスクは付きまといます。
「自分がいなかったらこの両親は別れてしまうんじゃないか」という不安からそれぞれの親の顔色をうかがい機嫌をとったり、「自分が何とかしないと」というプレッシャーを常に感じていたり。
両親がもめているときは「自分がもっと親達を円満にできていたら…。喧嘩しているのは自分のせいじゃないか」と自責の念に駆られる子供までいるそうです。
幼いころから常にそのような環境にさらされることで、自分の意見を言えない、自己肯定感を持ちづらい、人の意見に流されやすい、などの生きづらさを抱えて社会に出ることになります。
このような人は職を転々としやすい傾向にあり、社会的地位も低く、自己肯定感も低いことから「何のために生きているんだろう」という考えにたどり着きやすいようです。
傷付いた脳は元に戻らない?
1度傷付いてしまった(委縮・拡大)脳はもう一生そのままなのでしょうか。
いえいえ。
戻る可能性はあるようです。
成長に伴って物事の考え方や捉え方が以前と徐々に変わってくることで脳にもまた新たな変化が訪れるし、心のケアを早い段階から始めることで時間はかかるけれど少しずつ回復に向かえるそうです。
本来くつろげるはずの家庭で日夜子供にストレスを与え続ける大人が年々増加しています。
子供が安心・安全に暮らせる場所を提供することは、周りの大人の役割です。
私達は今一度、大人の行為が子供を極度のストレス状態に追い込んでいないかを確認し、改善しなければなりません。
まだ無力な子供を守ってあげられるのは、身近にいる親の務めですから。
おわりに
「ここは真似てほしくない」と思うところばかり子供に真似されたり、「親のこういうところが嫌だったから自分は気をつけよう」と思っていても親と似たようなことをしてしまったり…。それを目の当たりにするたびに「習慣ってこわいな」と本当に思います。
特に身近な家族の行動は知らず知らずのうちに心の中に蓄積されているようで、無意識のうちに似た行動をとっている恐ろしさがあります。
悪い習慣は子供の為にも自分の為にも配偶者の為にも断たなければなりません。
確かに「変わる」ということは気合もいるし努力もいります。でも「これじゃいけない」と毎日思い続けるくらいなら、変わる勇気に賭けてみる方がよっぽど未来は明るくなることでしょう。
夫婦喧嘩だし、と子供に甘えてはいけません。
冷静にじっくりと夫婦二人で話し合うのがマナーです。
脳に傷を持つ子供が一人でも減ることを願っています。
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