洗剤、柔軟剤、芳香剤、消臭剤、制汗剤、香水、シャンプー、リンス、ハンドソープ、ボディーソープ、化粧品…。
挙げればキリなく続くのですが、これらの共通点って何かわかりますか??
正解は、全てに合成香料が使われていることです。
匂いに溢れる現代は、その匂いに心地よさを感じる人がいる一方で、そのにおいにより体調を悪化させてしまう人も多くいます。
今回はそのお話をしていこうと思います。
“香害”は一歩外に出れば起こりうる
“香害”という言葉をご存知でしょうか。
2000年代半ばごろから日本では香りのする柔軟剤がブームとなり、各社の改良や商品争いの結果、においの強い柔軟剤が世に出回るようになりました。
柔軟剤を火付け役に、芳香剤や消臭剤などのにおい系の商品もどんどん増え、今では家中どこでも香りがするというご家庭も珍しくありません。
香りには人それぞれ好みがあり、ある人にはいい香りでも別の人には嫌いな香りということも当然ありうるわけです。
電車の中、レストランの中、隣の席の同僚など、もし自分に合わない香りをまき散らしている人が近くにいたら…。
もし誰かの不調を招いてしまうような香りを自分がまき散らしていたとしたら……。
呼吸を止めるわけにもいかず、とても苦しい時間を過ごす人がいるかもしれないという社会問題に、一人一人が真剣に向き合っていかないといけません。
香害に苦しむ人々
お天気のいい日。風も心地よく、窓を全開にして新しい空気を入れたい…。
でも、その当たり前のようなことをしたくてもできない人も世の中にはいらっしゃいます。
「隣の家の洗濯物のにおいがきつすぎて窓を開けられない___。」
そのようなにおいに関する相談が、国民生活センターには数多く寄せられています。
「電車の座席に前の人の残り香が強く残っている」、「学校の給食当番着の柔軟剤のにおいがきつすぎて子供が着られない」、「くしゃみや咳が止まらない」など、その被害は広範囲に及んでいます。
使う側はその匂いに慣れていても、そばにいる人も同じ感覚かはわかりません。
なぜ香りが長く残るのか
洗濯直後に香りがするのは理解できるのですが、なぜ時間が経っても、何度洗濯してもにおいは残ったままなのでしょうか。
これは、マイクロカプセルに閉じ込められたにおい成分の仕業だと考えられます。
肉眼で確認できないほどの小さなマイクロカプセルの中に香料を詰めたものを香料マイクロカプセルと呼ぶのですが、それらは洗濯洗剤や柔軟剤の中に無数に紛れ込んでいます。(洗剤キャップ一杯に1億個のカプセルが入っているという説も…)
CMで「衣類をこすると香りがする」と言われている商品はまさにこれですね。
衣類に付着した香料マイクロカプセルは熱や摩擦を受けない限り揮発せずに居座り続けることができるため、より長くにおいの効果を発揮できるとされています。
香り成分は、通常の合成洗剤では1~2%、柔軟剤で10%程度しか衣類に残らないとされているのですが、香料マイクロカプセルの場合は合成洗剤で20%、柔軟剤で50%も香りが残り、しかもその香りが何メートルも先まで届くために香害と呼ばれるようになってしまったのです。
化学物質過敏症
合成香料や建材などが引き金となり、化学物質過敏症という病に悩まされる人が増加しています。
ある特定のにおいを少しでも感じると頭痛、吐き気、喘息などをもよおし、その結果集中力の低下や注意力散漫に繋がってしまう病です。
子ども~大人まで幅広い年代で発症が確認されています。
症状が出ることに加えて辛いのが「たかがにおいでそこまで…?」と周りに思われてしまうところ。そしてそう思われるのが怖いので「そのにおいやめてほしいんだ…」となかなか言い出しづらく、結局我慢を積み重ねてしまうところです。
言いようのない不快感に襲われているため、勇気を出してお願いしてもまるで神経質な人のような扱いを受けてしまう…。
働きたくても特定のにおいによっては体調が悪くなるため社会生活ができず、理解されないまま家に引きこもりがちになってしまうという悪循環に陥ってしまう人もいます。
香害を世に知ってもらうために
香害は近年深刻になってきており、外国や日本の一部地域では香りを制限しているところもあります。
Wikipediaによると、岐阜市(岐阜県)、狭山市(大阪府)、阪南市(大阪府)、海田町(広島県)などが香料自粛の取り組みをしているそうで、この取り組みは全国的に広まってきています。
各自治体が香害を訴えるポスターやパンフレットを作成し、理解・自粛を呼び掛けています。
カナダでは…
カナダの西部に位置するハリファックスという都市では、2000年に公共の建物全て(学校、図書館、役所、職場、店舗などのあらゆる場所)で香水の使用が禁止されています。
過去には「香水のにおいがきつすぎる」という理由からバスの運転手さんから乗車を拒否された人もいるほどで、カナダでは20年以上も前から「におい」に対する意識は高いようです。
現在ではたばこ同様、「他人の吸う空気を汚染してはならない」という考え方がカナダ人の常識とのこと。
香害で苦しむ人が減るように、日本でもにおいの対策をもっと考えていかなければならないと思います。
香害の実際の例
具体的に香りでどのような被害があるのか、Yahoo!知恵袋に寄せられた相談からご紹介したいと思います。
最近席替えをしました。私の前の席の男子が香水をつけてきているようで、その匂いがかなりキツく、いつも頭痛がします。(高校生)
職場で物凄く匂い(香料)のキツイ人がいます。 「あ、あの人ここ通ったな」と分かるほどきつく、頭痛・吐き気がしてくるレベルです。 お昼の時などご飯の味も分からなくなったり、気持ち悪くなってしまったりするので止めて欲しいです。
小学生の親です。給食当番の白衣に過剰な柔軟剤を使用する親がいて、 臭くて本当に迷惑です。 クラスの児童で共有するのにその子が洗濯で持帰り戻った白衣が 科学的香料のニオイが臭くて、毎回うんざりします。 息子にアレルギーがあるので止めてもらいたい。
車の芳香剤の香りが苦手で人の車に乗らないようにしていますが、断ってもしつこく誘う人がいて、断り続けたら悪いか…と思い乗るとにおいですぐに気持ち悪くなります。
近所の洗濯物の柔軟剤のにおいがすごくて日中は窓を開けられません。
一部抜粋させていただきましたが、これら以外にも様々な場面で香りに苦しんでいる人はたくさんいます。
お友達の服の柔軟剤のきつい香りが原因で食欲がなくなり、給食が食べられない子もいます。
妊娠中の方はにおいに敏感になりやすく少しのにおいでも気分が悪くなることがあるので、周りの人達の配慮が欠かせません。
香りの好みや感じ方は人それぞれのため難しい部分もありますが、においで体調不良を起こす人がいるということを理解し、香水や柔軟剤などがきつすぎないかなど一人一人が意識を高めていくことが何よりも大切になってきます。
周りに迷惑になるほどのにおいを放っていないか、毎日気を付けてていきましょう!
おわりに
何十年か前、「香水のにおいの強い人=下品」と言われていた時代が日本にはありましたが、今はその逆で「どれだけ強いにおいを放てるか」にシフトしつつあるように思います。
我が家でも数年ほど柔軟剤を使用してきましたが、におい以外に効果がイマイチわからず、「必ずいるというものでもないな…」との判断に至って半年くらい前から買わなくなりました。
気分によりちょっとにおいを付けたいな…と思う時は天然のハッカ油を数滴洗濯時に入れて回しています。それで十分です。
香水や柔軟剤等に含まれる合成香料は当然ながら人体にいいものではなく、アレルギー以外にも健康被害が…という話もたくさん出てきています。
お金を払って健康を損なっていると思うとなんだかバカバカしくなりませんか?
最近では無香料のものを選ぶ人が増えてきているとのことで、においに対する意識は少し変わってきているのかもしれません。
誰もが日々の生活を快適に過ごしていけるよう、思いやりを忘れずにいたいですね。
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