思春期を迎えた子供達が親を疎ましく感じ、そっけない態度をとったり反抗的になったりするのは、自立をするために「親離れ」をしようとしている、思春期の正常な行動です。
この行動が現れることは子育てがうまくいっている証拠だと言われるほど、大切なサイン。
しかし思春期を迎えてもその時期を過ぎても母親(父親)にベッタリ・子供にベッタリな親子も存在しています。
親から自立しようとしない子供。子供を自立させない親。
どちらに問題があるのでしょうか。
共依存は将来を潰しかねない
いつまでもベッタリな親子は「一卵性母娘(おやこ)」「母娘(おやこ)カプセル」「友達母娘(おやこ)」などと呼ばれます。※漢字は「母娘」ですが、お子さんが男の子でもこのような現象は見られます。
このような家庭で育つとどのような傾向が見られるのでしょうか。
問題解決が苦手
子供に問題が降りかかった場合、本来であれば子供自身が考え、実行し、達成するべきことを親が代わりにやってしまうため、子供は解決する機会を奪われ解決能力の乏しい人間として成長していきます。
結果、友達付き合いに支障が出たり、社会に出てもうまくやっていけないなどの弊害が生じます。
一つわかりやすい例を出しますね。
私が営業をしていたころ、取引先に行くといつも私の対応をしてくれている取引先の人(40代男性)が神妙な面持ち。
どうしたのか尋ねると「昨日新入社員(20代男性)がミスをしたのでそれを指摘したところ、今朝その新入社員が時間になっても出社せず、心配して自宅に電話をかけるとその社員の母親が出て『うちの子は怒られることに慣れていないのでとても傷ついています。ですからもう辞めますので』と言われ電話を切られた」とのこと。
叱責したわけでもなく、ミスをしていると指摘し、次回から気を付けてと言っただけで?と注意したその方も困惑していました。
私も当時20代でその新人の彼とはさほど年齢の差はなかったのですが、「今の20代ってそんな感じなの?」とその方に聞かれたので「いいえ。彼の心情が全く理解できません」と答えました。そりゃミスしたら注意くらいされるでしょうに。
メール一本で退社、親が会社に怒鳴り込んでくる、など遠い世界の話だと思っていましたが、実際にそんなことが身近で起きるとは…と衝撃でした。
確かに世代間で考え方の違いや育てられ方の違いはあると思いますが、少しの注意で出社できなくなるほどのメンタルの弱さ、それを客観視できない親子に開いた口がふさがらない思いでした。
周りの見えない親子…恐るべし。
パラサイトシングルになりがち
先にお伝えしておきますが、実家暮らしだとしても全ての人がパラサイトシングルに当てはまるとは限りません。
仕事を持ち、実家に生活費を入れ、家事(役割)分担などをしている場合は例外です。もっとわかりやすく言うと、経済的にも精神的にも親から自立していればたとえ実家暮らしだとしてもパラサイトシングルであるとは言えず、住まいが実家というだけの自立した人だと考えることができます。
ここでいうパラサイトシングルとは、経済的にも精神的にも親に依存し続けている人たちを指します。
例え子供がパラサイトシングルだとしてもそのことを親が自覚し、子供の自立に協力的であればまた将来も変わってくるのですが、ここで厄介なのが親も子供に(精神的に)依存しきっている場合です。
親子関係が良好(だと本人たちは思い込んでいる)なので、親は子供を手放したくないし子供も親の元にいたいと相思相愛の状態になります。
親は心の隙間を子供で埋めることで満たされ、子供は精神的満足に加え生活を親がすべて支えてくれるので親の存在が不可欠です。
このような親子はお互いさえいれば他はどうでもいいので、友達がいなかったりいたとしても関係が希薄なことが多く、自分を世間一般と照らし合わせてみる機会が極端に少ないため、共依存に気付きません。
結果どうなるかというと、何歳になっても親なしではいられない子供・親に自分の人生を支配される子供が出来上がります。
親はいつまでも頼られることで自分の存在意義を確認し、心が満たされる。自分が死んだ後の子供の生活のことよりも「今の私の気持ち」が常に最優先なのです。
このような親ですと、たとえ子供自身が親から自立しようとしてもそれを阻んでくるケースも多く、子離れをさせるには時間と労力がかかります。
結婚生活に支障が出ることも
人生の大きな分岐点の一つである、結婚。
子供が選んだ結婚相手をけなしまくって破局させることは依存の強い親によく見られます。
子供は私のもの、私がいないと生きていけない、との思いのほか、子供が幸せになろうとすることを妬ましく思い邪魔するケースもあるんだとか。
うまく結婚までこぎつけたにしても、その後も苦悩は続くようです。
パートナーと話し合って決めるべき大切なことを親から口出しされる、「親がそう言うし…」とパートナーより親の意見を尊重される…など、結婚した相手としてはたまったものではありません。
親子といえどもう別の家庭。
適度な距離は不可欠です。
この共依存が理由で相手から離婚を切り出されるケースは意外に多いのです。
「自分」というものがわからなくなる
子供が何歳になってもやることなすことにいちいち口を出してくる親も多く存在しています。
友人関係はもちろんのこと、進学先や就職先にも口出し、交際相手や結婚相手についても当たり前のように口出し。
「私は私!」と親に強く言えるならいいですが、幼いころからこの調子で自分のすべてを管理されて育ったような人は親の機嫌を損ねることが怖いので強く出ないことが大半です。
親のために自分が我慢をすれば丸く収まる、親を悲しませたのは自分が至らないからだ、などと考え、自分はなんてダメな人間なんだと自己肯定感の低い状態で成長してしまっているのです。
これが日々繰り返されている中で「自分の人生って何なんだろう…」と精神病を患ってしまうケースも決して珍しくはありません。
親は「子供のために」と信じ込んでやっている言動なので、子供がふさぎこんだ原因が自分だということに納得もしなければ気付きもしません。
この異常事態を客観視することができないのです。
共依存の原因は…
生まれたての子供は親(特に母親)がいないと生きていくことができません。
誕生した我が子の姿を見てどの親も「この子のために頑張ろう」と思うでしょう。
最初こそ24時間万全に子供のサポートをしますが、子供の成長とともに親はあえて手を出さず、自分で挑戦させてみる、自分で判断させてみる、という経験を通常はさせていきます。
これは将来の自立に向けての訓練であり、子供の年齢と同じ年数を親として生きてきた、親の最高の愛情表現であると言えるでしょう。
親はほぼ確実に子供より先に死ぬのですから、いつまでも子供のそばで世話をしてあげることは不可能です。親がそばにいなくても自分で自立し生きていくことこそが子供の幸せに繋がると大半の親は知っています。
しかしそう感じない親も一定数います。
特に子供の世話を焼くことこそが自分の生きる意味、価値だと感じている人にその傾向が強いです。
子供の世話をしている以外に自分の存在価値を見つけられない、自分ができなかったことを子供に託して達成してもらおうとする、など我が子への勝手な執着心が不幸な共依存の世界への入り口となっているようです。
子供がどんどん成長していっても生まれた時と変わらずに「この子には私がいないと…」と強く思い込み、過度に世話を焼き、少しでも反抗されたら泣いて…。
子供も親に嫌な顔されたり泣かれたりするのは本意ではないですから、結果的に常に親の顔色ばかりを見て、自分の意志より親の意思を優先する、いわゆる「いい子」になってしまいます。
そんなことを幼いころから毎日繰り返しているうちに、親は「やっぱり子供には私がいないと…」と信じ込み、子供は「親が言うことに従っていれば間違いない」と疑いを持たず共依存へと転がり堕ちていくのです。
簡単に言うと
親の過度な承認欲求が過干渉を生み出し、子供を支配するようになるということです。
原因は子供ではなく、確実に「親」にあります。
「共依存」にならないために
親の立場の方へ
まず、親がしっかり「一人の人間」として子供を認めてあげることです。
言うまでもなく、子供は親の所有物でもなければ分身でもありません。
一人の意思を持った人間です。
人間は人それぞれ考え方が違います。夫婦であっても親子であっても全てにおいて完全に意見の一致する人なんて存在しません。なので、全て自分の思う通りに動く人間に疑問を持たなければいけません。
そんな人、この世にいないのが普通なのですから。
もし思い通りに子供が動いてくれるとすれば、あなたを恐れているか、面倒だと思っているか、自分では意思決定ができないほどあなたに毒されているかのいずれかです。
改善方法は距離を保ち、少しずつ自立を促していくことです。
今まで全てやっていてあげたなら、もうそんな年齢じゃないと子供を徐々に突き放していくことです。
そしてそのような突き放しの行動も親の愛情であるということを親自身が認識すべきです。そうでないと今までと変わらない甘い行動をとってしまうでしょうから。
子供のためにしているつもりのことが、実は子供をダメにしていたということをしっかり受け止めてください。場合によっては「虐待」とも言えます。
今までのことを否定するのではなく、今後どうするのがベストなのかを見据え、実行していくだけです。
子供の自立こそ、親の使命です。
子供の自立を促すためには、まず親であるあなたが子供から自立することが必須です。
子供の立場の方へ
もし幼いころから自分の意見より親の意見を優先してきていたのなら、その癖をこの場で終わりにしましょう。
親から生まれた命ですが、あなたの人生はあなたのものです。親のものではありません。
親に反対したら親が悲しむ…と思っているかもしれませんが、それは違います。
親に反抗するほどあなたが思慮深くなった証であり、成長したねと喜ばれるべきことなのです。
もしあなたの親がそれを悲しむようであれば、それはあなたの親が人一倍寂しがり屋で自分に自信のない人だからかもしれません。だからあなたが存在することで自分の存在意義を確かめていた可能性があります。
親と別の意見を通すときは親を全否定するのではなく、親の意見を参考にはするけれどもこちらの道を自分は選ぶ、と断言しましょう。相手の意見を聞きつつ自分の道を貫くことがベストです。仮に全否定してしまうと親は嘆き悲しみ、怒り罵り、あなたの思う道を何としてでも妨害しようとしてくるかもしれません。
できる限り早く、親とは距離を取ったほうがいいです。
今まで通り親の言いなりでいいという方には、冷静に自分の将来を見つめてみてほしい、としか言葉のかけようがありません…。
余談ですが、私の従弟が叔母と共依存です。
小さいころから叔母が世話を焼きすぎたせいか自分では何もできない、決められない、傍から見ていると叔母の言いなりになっているだけのようなアラフォー男になりました。
進路も親の言いなり、就職先も親の言いなり、お見合い相手も親が勝手に決めてくる。そしてそれに対し何も抵抗することなく受け入れるという典型的な共依存パターン。
親戚で何かしようという時にも本人からではなく叔母から「息子(従弟)も参加させてちょうだい」と連絡が来る始末。
それを母子とも何とも思っていなさそうで、あえてこちらから火に油を注ぐようなことも言い出せずに傍観しています。
結論から言うと彼は幸せそうには見えません。
学生の頃のみならず職場でもいじめにあっているようだし、就職活動もうまいこと行かず100社ほど不採用だったそう。
お見合いをしても交際どころか会うなり断られることも。
彼の持って生まれた性質もあるのでしょうが、親がそこまで過保護にならなければまた違った人生もあったのかもしれないなと思わずにはいられません。
子供の自立を妨げているのは親に他なりません。
親亡き後に親に縛られていたと気付く子供も多いそうです。
後悔しない人生を歩むためにも、自分の人生は自分で切り拓いていきましょう。
おわりに
どんな子供も親にとってはかわいいもの。
子供の幸せや心身の健康を願うならば、子供の成長に合わせて親も成長していくことです。
以前、9歳の娘が近所のお宅に遊びに行かせてもらったときに、お友達5~6人とはさみやカッターナイフで厚紙を切りながら工作をして遊んでいたらしいのですが、夕方帰宅した子供からそれを聞いた一人の母親が「カッターなんて使わせる家には子供を遊びに行かせられない」と遊ばせてもらった家の親にクレームを入れてひと騒ぎ…ということがありました。子供が怪我をして帰ってきたわけではないのに、です。
カッターは危ない、という過度な心配から起こした行動なのかもしれませんが、小学校3年生の子供ならカッターを振り回したらどうなるかくらい想像できるから危険なことはしませんし、ケガをしたとしても厚紙を切る際にせいぜい手を切るくらいでしょう。
私はそういう場こそ最高の学びの機会であり、友達と楽しい時間を共有するという貴重な時間だと思うので、家に上げてくれたお母さんが気の毒でなりませんでした。
失敗してわかることもある。次からどうしたらいいか考える機会でもある。
それを親が先回りして芽を摘んでしまうことは、親から子への愛情とは思えず、「私は子供を守ったんだ」という、単なる親の自己満足だと感じてしまいます。
子供を大切に思うなら、子供の腕を掴みっぱなしにせず、少しずつ手を緩めて最終的に離してあげることです。
人間には人それぞれの人生があります。
大切な一人の人間の人生を、誰であっても妨害してはいけません。
今子育て中の方、お子さんを過度に縛り付けていたりはしませんか?
成長する子供を寂しく思い、足を引っ張るようなことをしてはいませんか?
この記事を書きながら、私は我が子にちゃんと向き合えているのかな…意思を尊重してあげられているのかな…と考えてしまいました。
子供の言うことを全て聞いていてはとんでもない方向へ行ってしまうので親が正しい方向へ導いてあげることも必要ですが、ある程度基盤がしっかりしてきたら口を出すことよりも見守ることの方が大切だと改めて思いました。
「子供のため」と思ってやっていることが本当に子供のためになっているのか、親の願望の押し付けになっていないか、ということを親がしっかり意識していないと不幸な子供を作り出してしまいます。
親の言動は子供の人生を左右するほどの威力を持っています。
子供の幸せを願う時、あなたはどのような行動を起こしますか?
共依存で苦しむ親子が少しでも減ることを祈っています。
共依存を理解するための導入書として注目されている一冊。10代に向けて書いてあるので理解しやすいと定評があります。
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