化学物質過敏症___。
病名の通り『化学物質』が主な原因で、化学物質を多量に使用している商品が溢れる現代を象徴している病とも言えるのかもしれません。
この病に苦しむ人は年々増加傾向にあり、子供から大人まで幅広い年代で発症が確認されています。
慢性化している身体の不調は、もしかしたら化学物質からきているのかもしれません。
化学物質過敏症とは
たとえわずかな量だとしても、化学物質に身体が反応して様々な症状が出るのがこの病の特徴です。
特定の化学物質に大量にさらされたり(曝露)、微量ではあるけれども繰り返し曝露されることで発症すると言われています。
化学物質に身体が反応するかどうかは個人差が大きく、同じ環境にいても発症する人としない人がいたり、発症したとしても症状の出方も様々なので周囲の人の理解を求めるのが難しい一面があります。
どんな化学物質で反応する?
化学物質過敏症の方の半数以上が室内の空気汚染が原因となって発症しています。
建物自体に使用されている建材や塗料、接着剤、防蟻剤などのホルムアルデヒドや有機化合物が揮発(液体から気体に変わること)することで室内空間を汚染し、そこに身体が反応して様々な不快症状を引き起こし始めることが多いようです。
※シックハウス症候群と同じだと捉えられることが多いですが、住宅を原因とする体調不良の総称をシックハウス症候群と呼ぶため、厳密には全く違う疾病です。
他にも家具、制汗スプレー、殺虫剤、柔軟剤、芳香剤、消毒液、シャンプー、リンス、香水、タバコ、農薬などにも反応するため、日常生活を送るのに苦労されている方も多くいらっしゃいます。
北里研究所病院臨床環境医学センターの坂部貢先生が出したデータによると、
化学物質過敏症の原因 シックハウス 59% 農薬・殺虫剤 21% 有機溶剤 8% その他 12% 患者221名(女性164名、男性57名)。6~62歳(平均42歳)。 参照:http://www.cssc.jp/cs.html#b
化学物質過敏症の原因の大半はシックハウスからきているようです。
主な症状
化学物質過敏症を発症すると、
・湿疹 ・蕁麻疹 ・不眠 ・精神不安定 など
このような症状が見られることが一般的には多いですが、このほか消化器系、泌尿器系、婦人科系、神経系などにも影響が確認されていて、個人によって症状の出方が異なります。
重症度が増すと身体の不調だけでなく、いられる場所が限られたり食べられるものが限定されるなどの不便が多くなります。
誰にでも発症リスクのある、身近な病
化学物質過敏症は、例えば身体の抵抗力の弱い人がかかりやすいとか、高血圧の人が発症しやすいなどの目安は一切ありません。
この病の怖さは、ある日突然発症するというところ。
そしてその可能性は誰にでもあるというところです。
突然発症し、その後ずっと症状が続いていく…という点では花粉症の発症と似ているかもしれません。
ここで興味深いデータをご紹介しますね。
2017年に上越市にある県立看護大の永吉雅人准教授が市内にある62の小中学校の全学年(計11,271人)を調査したそうです。(うち有効回答7,224人)
すると化学物質過敏症の兆候が見られる児童生徒は、ほぼ全ての学年で1割以上。
学年が上がれば上がるほどその割合は増加傾向にあり、中学3年生では小学1年生の2倍以上の15%という結果が出たそうです。
親が気付いていないだけで、もしかすると自宅そのものや日用品が原因で兆候が出ているかもしれないのです。
大量発症するケースも
化学物質過敏症は、個々に発症するケースが多いですがまれに大人数が同時に発症することもあります。
杉並病
杉並病(すぎなみびょう)は、東京都杉並区の不燃ごみ中継施設「杉並中継所」周辺で発生した健康被害である。この施設は、収集した不燃ごみを江東区の処理施設に運搬するに当たり、圧縮・積み替えを行うため建設されたものである。1996年の操業開始以降、付近で異臭や住民の体調不良が多く発生した。2002年、住民の申請により公害等調整委員会が被害の原因は杉並中継所の操業に伴って排出された化学物質である旨の裁定を行い、都は損害賠償を行っている。 出典:Wikipedia
多くの周辺住民がそれぞれに体調不良を出すほど空気が汚染されてしまったのでしょうね。
中には呼吸困難に陥り、入院した人もいらしたとのこと。
この施設は2009年3月31日をもって閉鎖しています。
学校でも発症
『シックスクール』という言葉をご存知でしょうか。
学校で発症するもので、しばしば集団で発症することのある病です。
校舎の改修等で使われた塗料や建材を原因とすることもあれば、大掃除の際に使用する床のワックス、防虫処理したグラウンドの木、除草剤をまいた校庭などから体調不良を起こすこともあり、発症すると化学物質過敏症の症状と似た症状が出ます。
もちろん発症には個人差があるのでほとんど発症しない子もいれば、学校に来られなくなるほどにひどい子もいます。
平成24年に文科省が作成した資料によると(健康的な学習環境を維持管理するために -学校における化学物質による健康障害に関する参考資料-)、教室内の揮発性有機化学物質を年に1度検査、それ以外にダニ・ダニアレルゲンについても年に1度調査する旨が書かれています。
洗剤・柔軟剤で主婦の罹患率が増えている
化学物質過敏症はシックハウスをきっかけとして起こる率が高いと冒頭でお伝えしましたが、それ以外にも他人の化粧品や香水のにおい、衣服の洗剤や柔軟剤、整髪料などに含まれる化学物質を原因として体調不良が起こる例がかなり増えてきています。
最近では洗濯洗剤や食器洗剤、香りの柔軟剤などを取り扱うことが多い20~50代の主婦層に増加傾向が見られるのですが、裏を返せばその家の子供達もその洗剤を使用したものを身に付け同じ空間にいるわけですから、化学物質に汚染された空気をたくさん吸って生活しているということです。
今は影響が出ていないように見えていたとしてもその空気を吸い続けることは体内に化学物質を溜め込み続けることとイコールなので、避けるに越したことはありません。
子どもの多動や学習障害の原因になることも
一昔前に比べると、落ち着きがなかったり、感情のコントロールができなかったり、学習に支障が出るような子供が多くなったような気がしませんか?
その一因に化学物質の影響が疑われています。
動物を使った実験では、有機リン化合物などの化学物質が多動を引き起こすという結果が出ていますし、化学物質のない空間に行くと粗暴な子供が別人のように優しくなるなどの例も報告もされています。
化学物質を使用した製品は私達の身の周りにたくさんあります。
しかしその物質の大半は、使用を継続した時に人体にどのような影響が出てくるのか調べられていないもの、もしくは毒性をテストした結果を公表されていないものばかりだそうです。
もしあなたが日常的に使用しているものが数年後に毒性が高い商品だと判明したら…。
後々後悔しないためにも、商品はじっくり吟味する必要があります。
おわりに
化学物質過敏症、なんとなくご理解いただけたでしょうか。
目に見えないものが原因となっている病気は、いつ発症するかわからない分本当に怖いですよね。
昨年から引き続いているコロナも、誰がいつ罹患してもおかしくないので世界中の人々が恐怖を抱えています。
コロナ対策でお店などの入り口に「アルコール消毒をしてからお入りください」と呼びかけているところが多いのですが、化学物質過敏症の人はこの消毒液の成分によっては体調不良を引き起こすため、コロナと過敏症の二つに同時に苦しめられている方もいらっしゃると聞きます。
皆さんも身の回りにあるものを一度見直し、ご自身と家族の健康を確保してくださいね。
良かったらこちらの記事も参考にどうぞ☆→洗剤・柔軟剤などの“香害”に苦しむ人が増加傾向。その香り、キツすぎませんか?誰かの迷惑になっていませんか?
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