子供の成長スピードは皆一緒ではありません。頭ではわかっていても他の子供の様子を見て我が子との成長の違いにショックを受けた、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。成長が気になる、行動が気になる、そんな我が子の「気になる」を発見した時、あなたならどうしますか?
誰に相談する?
「気になる」を発見したら、家族や友人に相談するという方がほとんどでしょう。我が子の現状を伝えてそれに対する相手の意見をもらい自分の気持ちを落ち着ける。「まだこれから発達するでしょ」「そんなに心配しなくても大丈夫だと思うよ」と前向きな言葉を掛けられたら「私の考えすぎだ」「時間とともにみんなに追いつくだろう」と自分自身に言い聞かせ、納得し、疑問に終止符を打ちますよね。
しかし相談した家族や友人は、保育士さんや保健師さんなど子供の発達に関する知識を兼ね備えた方でしょうか。もしそうでないとしたら安易に「大丈夫」という言葉を真に受けてしまうとお子さんの大事な発達時期を逃してしまうことになりかねません。何より傍にいる親が我が子の成長に不安を感じているのですから、その気持ちに蓋をしても親子の根本的な解決にはなりません。
もしそうじゃなかったら───────。
あらゆる可能性を視野に入れて今親が子供のためにできることを地に足つけて考える必要があります。
健診で発見できるケースが多い
うちの長男は小さい頃から成長スピードがゆっくりで健診で引っかかることもしばしば。1歳半健診の時はまだ歩けず専門機関を紹介され受診。医師や理学療法士さんに診てもらった結果「成長がゆっくりなだけ」との診断が下りました。ちなみに健診後すぐ、1歳7カ月で歩き出しました。
3歳児健診の際は特に指摘は受けなかったのですが、言葉の発達が遅れているような気がしていたので別日に相談予約をして帰宅。その相談日、通された部屋には保健師さんと臨床心理士さんがいらっしゃり、言葉の相談させてもらえるかと思いきや、突然「遠城寺式発達検査」なるものをされ。わけもわからないまま子供の発達について質問され答えたり、実際に遊ぶ子供の姿を観察されたり。結果、その時息子は3歳4か月だったのですが、知能面、精神面、運動機能など、総合的に1年程度の遅れがあると指摘されました。言葉の発達をどう促していったらいいのか相談に来ただけだった私は突然こんなことを言われ「ハア????(怒)」という心境でした。療育施設の利用を勧められ、いくつかの施設の資料を受け取り説明を受け…。結局それだけで時間が過ぎ、言葉の相談もできないまま帰ることに。帰り際保健師さんに「もしもっと詳細が知りたければ同じ施設に発達専門の医師がいるのできちんとした診断を受けられるから」と言われ、怒りが焦りに変化。帰り道、運転しながらあまりの不安に涙が出ました。この時は相談予約なんてしなければよかった、と思いましたね。自分の子供を否定されたような、そんな感覚でした。
発達障害等の特性が定期健診で見つかるケースは多々あって、第三者に客観的に見てもらうことで自分の子供の成長をより詳しく知ることができるので子供にとって受診することはとても大事なこと、だけど成長に対する指摘があっても「うちの子はちゃんと成長してるから」とアドバイスを無視し適切なフォローをしない親も一定数いること、健診に来ない為に自分の子供がそうであることにすら気付かない親もいること、早期にわかればわかるほど療育等を通して成長を促すことができることなどを保健師さんにお聞きしました。うちの場合、全体的に遅れているからまだマシ(本人にとってはまだラク)だそうで、極端に何かができて極端に何かができない、という特性だと本人自身がそのギャップに苦労するのだそうです。
子供の特性がわかっただけでもプラスなのかなぁとも思いましたが、でもやっぱりショックの方が大きかったですね…。
子供のためを思うなら
この出来事を夫に相談すると「医師の診断を受けよう」との答え。まだまだ成長段階だし少しずつではあるけれど成長しているから様子見でいい、と考えていた私には夫の言葉は衝撃でした。「ただでさえ今日の指摘にズタズタにされてるのに、さらにもし何かの診断が下ったとしたら受け入れられない」と私の気持ちを正直に言うと、「親の気持ちなんか二の次。まずは今の息子の状況をきちんと親が把握して、その上でどういう方法で成長させてあげるのが彼にとってベストなのか考える。子供にとって何が一番いいのかを考えたら、早い段階で医師にきちんと診断してもらうことだと思う」と即答され、私は息子のことじゃなく自分のことばかり考えていたんだと気付きました。そうだよね、息子のためを思うなら早いうちにこの子の特徴を知ってこの子に適した方法で成長させてあげるのが親のできることだよね、と気持ちを切り替え、翌日診断の予約を取りました。そして発達センターで紹介された療育施設に片っ端から連絡し、家から一番近い療育施設に週に1回通えることになりました。
我が家の場合はこのような展開で医師の診断を仰ぐことを決めましたが、中にはなかなかそこまで気持ちを持っていけないという親御さんもいらっしゃると思います。必死で育ててきた我が子に何かあったら…と結論が出るのがすごく怖く感じられますよね。私も予約から診察まで、そこからさらに診断が出るまでは感じたことのない恐怖や不安につぶされそうでした。でも、結果を先送りにしても現実は変わりません。今診断されても後から診断されても結果は同じです。診断を受けたとき何もなければないで疑問は根本から解決されるし、もし特徴があればそれを踏まえて今後の動きを考えられます。親の気持ちを優先して結果を怖がって先送りにしてしまうとその分の時間、その子にとってベストな成長のさせ方から外れてしまいます。特徴のある子は早ければ早い段階から療育などを通じて活動することで、専門の知識を持った先生方が本人の苦手なところ、足りないところをしっかり見極め、今後生きていくためにその部分をどうカバーしていくか、一緒に考えてくれます。親の都合で時間を経過させるより、「子供のために」医師の診断やアドバイスを早期に受けることは親ができる最大のサポートかもしれません。
医師の診断を怖がらないで
診察予約の日、息子と二人でドキドキしながら発達支援センターに向かいました。その時も医師に息子の発達状況について聞かれ、息子の様子を観察され、1時間もかからずに終わったと思います。子供に積み木やカードを使ってなんかしらの試験をするのかと思っていたので拍子抜け。(実際は『新版K式発達検査』という検査をするようですが別室に連れて行ったら息子が大泣きしてできなかった) 前回の保健師さん&臨床心理士さんとの面会の時と変わらない内容だったので、こんなのできちんとした診断が出せるのだろうかと余計な不安がこみ上げました。この日は診察のみで結果はまた後日。結果を聞く日を予約を取って帰りました。
その週の療育の日。支援センターで発達の診察を受けたことを療育の先生に伝えると「おそらくこんな形で結果が出てくると思います」とサンプルを見せてくれました。3枚つづりの紙には【子供の様子】【医学的所見】【子供への接し方】と大きく3つの項目があり、それぞれに詳細な説明文がつくとのこと。「新版K式という検査はいわゆる『普通』と呼ばれる子が受けても何かしら診断名がついてくるような検査です。答えが微妙にズレただけでも結果が変わる。『普通』なんてないような試験です」加えて「診断が下りたとしてもその診断名は気にしないようにしてください。大事なのは出た結果じゃなくそこからどうフォローしていくかですから」そうおっしゃいました。結果の良し悪しばかりに気を取られていた私にはすごく有難い言葉でした。何かあったとしても周りのフォローでさほど困らず人生を送ることができるかもしれない。もし診断名がついたら息子はどうやって生きていくんだろう、と結果が出る前から不安で視界が真っ暗だったところに光が射したような感覚でした。夫とも「発達障害があってもなくても、息子の特性や成長の促し方がわかるだけでもいいんじゃないか」と話すようになりました。何があっても私たちの子供に変わりはないし、今まで知らなかった事実を知っただけの話だと。
医師の診察から半月後、夫と二人で検査結果を聞きに行きました。結果は「軽度知的障害の疑い、自閉スペクトラム症の疑い、協調性運動機能障害の疑い」と書かれていました。療育の先生から事前にアドバイスを受けていたとはいえ、ショックはショックでした。でも隣に夫もいてくれたし、この結果からどう息子を成長させていくか前向きに考えて、結果説明をする医師に夫婦でところどころ質問しながら割と落ち着いた時間を過ごしました。きちんとした検査ができなかったのではっきりはわからず、遠城寺式の結果や医師に会った時の息子の様子、親から聞き取りした事項のみでの検査結果となり、「すべて『疑い』の状態ですのではっきりした診断名はつけられません。また半年後~1年後に検査を受けてきちんと検査ができればもっとはっきりしたことがわかると思います」とのこと。療育の先生にもこの結果をお知らせしたところ「半年後にここで新版K式の検査をしてみましょう」ということになりました。
診断を終えて思うこと
結果が出るまでは「どんな結果が出るんだろう」と怖い気持ちもありましたが、療育の先生の言葉もあり割と冷静でいられたと思います。どんな試験なのか、どのように結果が出てくるのか、事前に何も知識のない親御さんは結果が出た瞬間取り乱して大泣きする人もいるそうです。最初は確かに受けることに抵抗があったのですが結果として息子の特性が客観的にわかってよかったな、と思っています。
この半年間、子供の発達や療育機関に関する本を何冊も読み、子供にとって一番辛いのは、周りに理解されないことじゃないか…と感じました。支援が必要な状態でもそれに気付かれずにみんなと同じようにできると思われ、できないと咎められたりバカにされたり…。そういうことが繰り返されると「自分は何でこんなにダメなんだろう…」と子供自身が自信を無くし、悪循環に陥る。親も「何でうちの子こんなこともできないのかしら…」とイライラ。もしこれがその子の持つ特性だとわかっていたとしたら、接し方も変わるしやり方も変わる。どうしたら理解してもらえるか、どうしたら周りにうまく溶け込めるか、どうしたら社会に出ても困らずに生活できるか。1番はやはり子供の幸せだし将来自立させてあげることだと思います。ケアが遅れれば遅れるほど軌道修正にも時間がかかります。持って生まれた特性が消えることはないけれど、早期からフォローしてあげることができれば本人が今後抱える可能性のある「生きづらさ」を少しは軽減させてあげることができるかもしれない。そのためのきっかけを親が作ってあげられるなら、いくらでも尽力したいと思いました。
疑問を感じたらとにかく検査!とまでは言いませんが、子供の今後は親次第。子供が自発的に単独で検査を受けに行くことなんてできないのですから、親の判断にかかっているといえます。もし気になる点がありそれがある程度継続されているようなら医師の診察を受けてみるのも今後の親子のためです。診断名を付けに行くわけじゃない。子供の特性を親がより深く知り、その上でどうしていくのが子供にとってベストなのかをアドバイスを受けに行くんです。医師、自治体、療育機関、幼稚園、小学校等々、子供を支えることができる人間は親だけじゃなくたくさんいて、相談もたくさんできます。家族間だけで悩まず、知識のある人のアドバイスを受けることで心が軽くなることもあります。もし発達について悩まれているのなら、子供にとってのベストは何か、親の気持ちは二の次にして1度検討してみてください。自ずと答えは出てくると思います。
息子ですが、来月or再来月あたりに新版K式の検査になりそうです。どんな結果が出るかはわかりませんが、子供にとって一番いい選択をするつもりです。とはいえやっぱりドキドキはしますけどね…(苦笑)!
悩まれている方にとって、この記事が少しでも後押しになれば幸いです。
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療育を検討中の方やすでに通っていらっしゃる方に気づきがあるかもしれない本をご紹介します。
私も実際に読みましたが、保護者の立場や現場で関わってくださる方の体験談が書かれています。色々な立場から見た「療育」というものを感じることができるので、私にはとてもプラスになりました。子供の変化を療育で培っているのがリアルにわかるので、物事をポジティブに考えようという力にもなります。
デリケートな問題なので人に相談することがなかなかできない方には特に何か参考になると思います。
良かったらご一読ください。
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