話したいのに話せない…。吃音症と闘う子供達に理解とエールを。周りの協力の有無で症状が左右されることも。

育児

20人に1人の割合で発症すると言われている吃音症。

発症する時期も、その特徴も、持続期間も人によって様々です。

中でも3歳~5歳頃の言語機能が著しく発達する時期に発症することが多く、周りから言葉について咎められたりからかわれたりすると症状がより深刻になってしまうこともあります。

吃音症に対する理解が浸透していないことがこれらの症状を持つ大人や子供を苦しめているのが現状で、環境に左右されがちなこの病気には周囲の方々の理解が不可欠です。

吃音症って何!?

話したい言葉がスムーズに出てこず、最初の言葉を繰り返したり(連発)、引き伸ばしたり(伸発)、詰まってしまう症状(難発)のある状態が吃音症です。

例えば「ぼくね…」と話し始めるところが吃音を患う人では

「ぼ、ぼ、ぼ、ぼ、ぼ、ぼくね…」

「ぼーーーくね・・・」

「ぼ………くね…」

など、出だしがうまくいかないという特徴があります。

本人は話したくて仕方ないのですがうまく言葉が出てこないため苦しそうな感じでしゃべることもあり、周囲から不思議な目で見られてしまうことも…。

きゅーたろう
きゅーたろう

ゆっくり最後まで話を聞いてほしいんだ。

「早くしゃべって」「はっきり言って」などと言われると症状がますます悪化して話すことが怖くなっちゃうんだよ。

吃音症の原因は?

吃音の原因は親にあるのでは…と言われていた時代がつい最近まであった、と聞いて驚きませんか?

愛情不足じゃないか、厳しすぎるんじゃないか、子育て方法が悪い…等々、吃音に悩む親子をさらに周りが追い込んで孤立させてしまうことも多々あったようです。

吃音はもちろん親のせいなんかではなく、それらは根拠もなく言われ続けていた偏見でした。

現在の吃音症の原因の考え方は「親が悪い」なんて言う発想はもちろんなく、「3歳前後の急激な言語発達の途中で、どもりやすい性質を持った子にたまたま現れる症状」と解釈されています。

吃音のある子は脳の言語機能が良すぎる(頭の回転が速い)ため、出したい言葉に口が追い付いていない状態だとの見解を示す医師もいらっしゃるほどです。

親は親で子供の吃音に悩んでいるのに、原因が親だなんて言われたら…。

正しい理解が世の中に浸透していってほしいなと思わずにはいられません。

きゅーたろう
きゅーたろう

どんな病気や症状も「原因は親なんじゃないの?」なんて言われたら誰だって嫌だよね。

吃音は持って生まれた特徴が言語にたまたま表れているだけのことなんだよ。

吃音症は治るの?

昨日は詰まりながら話していた言葉を今日はすらすら言えていたり、今日うまく話せていたとしても明日はまた吃音がひどい状態になったりと、吃音には調子のいい日と悪い日があります。

同じ言葉を発するにしてもすらすら言える日もあればそうでない日もあったりで、近くにいる親はそれだけで一喜一憂してしまうことでしょう。

吃音は発症してから3年ほどで男の子は6割、女の子は8割が自然回復すると言われています。

発症したとしても過半数が自然に治っていくのですが、逆に言うと吃音を発症した男の子の4割、女の子の2割は治らないまま成長していくことになります。

吃音症は医師や言語療法士の治療を受ければ治るというものでもありません。

風邪薬のような特効薬もありません。

治る人もいるし治らない人もいる。

そんな出口の見えにくい病だからこそ、本人や親たちは余計に苦しいのかもしれません。

だからこそ、周りの理解と協力が必要不可欠なのです。

きゅーたろう母
きゅーたろう母

過半数が自然に治るなら、しばらく様子を見守っておくだけでいいんじゃないの?

きゅーたろう
きゅーたろう

自然回復率を上げる方法は、世界でもまだ見つかっていないんだ。

「そのうち治るから放っておこう」という姿勢は、回復しなかった時に子供に大きなハンディを背負わせることになりかねないよ。

回復しなかった時のことも視野に入れて、「今できることは何か」を考えていかないといけないね。

吃音を発症したら

吃音は徐々に始まる子もいればある日突然発症する子もいます。割合で言うと約4割が突然発症するというデータがあり、昨日まで普通に話していた我が子の突然の吃音にとんでもない不安を抱える親御さんも多いようです。

突然始まったことで親は「昨日たくさん怒っちゃったからかな…」とか「用事があって子供を預けたからかな…」などきっかけとなった出来事があるはずだと振り返り、自分を責めがちになりますが、原因は親にあるわけではないのでそのような詮索は意味がありません。

たまたまそのタイミングで吃音症を発症しただけに過ぎないのです。

きゅーたろう
きゅーたろう

吃音の原因が自分(親)にあるなんて思わないで大丈夫だよ

子供への接し方

すんなり言葉の出てこない子供をそばで見ている親は、その姿をもどかしく思うことでしょう。

特に突然始まった場合は「この前までは言えていたのに…」とモヤモヤも大きく、つい「ちゃんと喋れるでしょ」と言ってしまいがちです。

親だってもちろん悪気があるわけではなく我が子を心配してそのようなことを言ってしまうわけですが、子供に言葉について指摘することは更なる悪化を招いてしまう恐れがあるためNGです。

話し方のアドバイスをする
ex:落ち着いて話して、ゆっくりしゃべって、もう一度言ってみて、など
正しく発音できるまで言い直しをさせる
子供の話す内容よりも子供の話し方ばかりに注目する
何より大切にしたいのはうまくしゃべれるかどうかということよりも、子供の「伝えたい」という気持ちです。
一生懸命に話そうとする子供の姿を指摘することは、「話したい」という気持ちを減退させ、話すことに抵抗を持ち始めるきっかけを作ってしまうことになりかねません。
まずは子供の話を聞いて、共感をしてあげることが最重要です。
どんなしゃべり方であっても「伝わる」ということを子供に実感させ、「話をすることが楽しい」と思える環境を作ってあげることが周囲の大人ができる最大のサポートになります。
きゅーたろう
きゅーたろう

子供はおしゃべりが大好きだからね💕

周囲への理解を求める

お子さんが幼稚園や小学校に通っている場合は人前で話さなければならない機会も多いため、前もって担任の先生などに伝えておく必要があります。
担任の先生からその学年の先生方、その他の先生に伝えてもらうのもいいかもしれません。
「吃音」という言葉や症状は何となく知っていても正確な知識を相手が持っているかどうかはわからないので、吃音についての資料等を持参してわかりやすく伝えて理解を促すとよいでしょう。
懇談会などでクラスの保護者の方と顔を合わせる機会があれば子供に吃音があること、からかわれると悪化する可能性があることなどを伝えておくのが望ましいです。
周囲の理解が多ければ多いほど当事者にとっては追い風です。
吃音を隠そうとすればするほど緊張して空回りすることが増えるため、子供の吃音を周りに隠すよりもオープンにしたほうが子供はのびのびと話す機会に恵まれます。
将来的に吃音が改善するかどうかはその時点ではわかりませんが、どちらにせよ「話をすることに抵抗がない」ということは生きていく上で非常に重要な基盤になります。
子供が話すことをためらわないよう、周囲の協力が不可欠です。
きゅーたろう
きゅーたろう

【話す→相手に伝わる→共感してもらえる】という行為を繰り返すことは、子供の自己肯定感や自信を高めるきっかけになるよ。

本人や兄弟、お友達にも説明を

幼いうちは何事もなく過ぎることがあっても、5~6歳あたりから本人や周りの子供達も「あれ?なんかしゃべり方が…」と気付き始めます。
「なんでうまくしゃべれないんだろう?」と思うのは本人も周りも一緒で、そのくらいの時期にはなぜそうなのかを話す機会が出てくることが増え始めます。
その際には決してごまかしたり濁したりせずに、子供のわかりやすい言葉で説明してあげるようにすると子供なりに納得するようです。
本人には…
「お話ししたい言葉がたくさんあって、口がついてきてないだけだよ。それは頭がいい証拠なんだよ」
兄弟姉妹やお友達には…
「これがこの子のしゃべり方でわざとじゃないんだよ。お話ししたい、って気持ちがたくさんあるから最後まで話を聞いてあげてね」
など、「病気」というより「特徴」というニュアンスで話をするといいと思います。
子供は残酷な一面も持ち合わせていますから、「しゃべり方が変だ」と本人に指摘したりからかってくるお友達にも遭遇するかもしれません。
子供の様子が少し変かな…と感じた時は本人の話を聞いてあげて、必要があれば幼稚園や学校の先生からからかってきたお友達に説明をしてもらうことも必要になります。
きゅーたろう
きゅーたろう

誰かに間に入ってもらうとスムーズにいきやすいよ

親の心の持ちよう

徐々に、または突然始まる吃音に、心を痛める親御さんは世の中に多くいらっしゃいます。
「この子はどうなってしまうんだろう」「治るのだろうか…」という不安を心のどこかに常に持ち合わせ、うまく話せないわが子に焦りや苛立ちの感情を抱いてしまうことは決して珍しいことではありません。
時には罪のない我が子にあたってしまい、罪悪感に襲われることだってあります。
そんな中で最も大切なことは「親が吃音に振り回されないこと」です。
きゅーたろう
きゅーたろう

親の持つマイナスな感情は言葉に出さなくても子供に伝わるよ。

それは子供を追い詰めてしまうきっかけにもなるんだ。

子供の記憶に残るもの

幼少期に吃音症を発症したことのある人の体験談をネットで検索したところ、友達からからかわれたことがある、人から指摘を受けたことがある、という記憶よりも鮮明に心に残る記憶があると書き込んでいる方が多数いらっしゃいました。
一番印象に残っているもの。
それは「親の姿」でした。
一部抜粋しますね。
「僕がしゃべると親が悲しそうな顔をする。それが今でも一番心に残っている」
 親が僕の吃音に悩んでいることは子供ながらに知っていた。
 親に聞いてもらいたいと私がしゃべればしゃべるほど悲しそうな表情をする。
 だから親の前では吃音が出ないようにと気を遣う。
 すると緊張して余計にひどくなり、さらに親が悲しそうな目をしていた…。
「私が吃音症であることを隠したかった親。人前で話そうとすると嫌な顔をされた」
 幼少期に吃音症を発症した時、世間体が第一の親は私が人前で話すことを嫌った。
 「ちゃんと喋れないんだから黙っておきなさい」という言葉は何よりも辛かった。
どんな時でも優しく見守っていてほしい。
「大丈夫だよ」って背中を押してほしい。
こんな自分を全て受け入れてほしい。
このような思いはなにも特別なわけでもなく、どのような子供も当たり前に持っている感情です。
味方でいてほしいはずの親に自分が拒絶されているような感覚を抱いた時ほど子供の心に深い傷を負わせることはありません。
他人から言われた多くの嫌な言葉より、親のたった1回の言動の方が子供にとっては辛いことが往々にしてあるのです。
子供は吃音症というちょっと特殊な特徴を抱えながら、一生懸命に自分の言葉で伝えようと頑張っています。
子供の吃音を直したいのであれば、まずは親が吃音症を持つ我が子を受け入れることが大前提です。
そのためにまずは吃音症に関する正しい知識を持つこと
周りに助けを求めること
周りに協力してもらうこと
そして子供の心に寄り添うこと
そのときできる最大限のサポートを精いっぱいしてあげましょう。
きゅーたろう
きゅーたろう

外部に相談をすることは、親子にとって事態を好転させるチャンスに繋がっていくよ。

専門知識を持つ人に相談を

子供の成長に不安を感じた時に親身に相談に乗ってくれるのが市町村に設置されている「発達支援センター」や「療育機関」です。
発達に関するあらゆる心配事などを相談でき、サポート施設や適した病院の紹介などもしてくれます。
吃音であれば、支援センターに出入りしている言語聴覚士や言語聴覚士のいる病院を紹介してもらって相談ができ、必要に応じて話し方の練習(訓練)を受けることもできます。
「そのうち治る」と前向きに捉えることも必要なのですが、治らなかった時のことを考えるのも同じくらい大切です。
知識を持つ人に早めに相談し、幼いうちから正しい方向性で子供をサポートするに越したことはありません。
3歳時点で吃音に気付いていながら「大丈夫」と楽観視し、なかなか良くならないからと数年後にやっと環境を整え始めたとしても効果の出方は変わってきます。
正しい知識を身に付け、子供のみならず親も一緒にサポートしてもらうためにも専門機関への相談は早めにすることをお勧めします。
きゅーたろう
きゅーたろう

早めの相談が後々大きな差となることがあるよ。

発達を促すには正しい知識を持った人に相談するのが一番いいね。

“吃音=不幸”ではない!

五体満足で特に困ったところがない子供でも育てていく親は様々な不安を抱えるもの。

ましてや人と違う特徴を持っているお子さんの親は、並々ならぬ不安をずっと抱えて日々を過ごしていることでしょう。

吃音症は20人に1人と割と高い確率で発症するものですが、発症しない子の方が大半。

発症してしまった我が子に対して、「なんでうちの子が…」と苛立ち、不安を抱え、悲しみに暮れ、他の子と比べては落ち込んで…というマイナス感情に飲み込まれてしまうご家族は意外に多いものです。

でもそれって、“吃音=不幸”だと親が決めつけてしまっているからではないですか?

お子さんをよく見てください。

心身共に健全だけど言葉だけがうまく出ない、ただそれだけの話ではないですか?

話すことは苦手かもしれないけれど、そのほかにいいところがたくさんあるのではないですか?

吃音は決して不幸とイコールなものではありません。

吃音があっても総理大臣になった方もいる。聞き取りやすさが大切なアナウンサーになった人だっている。警察官、消防士、医師、看護師…。例を挙げればキリがありませんが、吃音が原因で人生が破壊されるなんてことは決してないのです。

ただ、ここまでたどり着くには周囲の理解・協力などが不可欠であることは間違いありません。もちろん、本人やサポートする家族の「絶対やってやる!」という強い気持ちも大切です。

家族、園や学校、周囲のお友達、専門知識を持つ方々…たくさんの人の理解と協力、そして温かい心に触れながら「吃音」と共に子供は成長していきます。

成長過程で、吃音さえなかったら…という吃音ならではの嫌な体験をすることもあるかもしれませんが、だからといって不幸というわけでは絶対にないです。

 

吃音があることで周囲の優しさに人一倍感謝できる子になるかもしれません。

人一倍、人の痛みに寄り添ってあげられる子になるかもしれません。

人一倍、困難を乗り越えるための努力をする子になるかもしれません。

人一倍、なんでも笑い飛ばせるメンタルの強い子になるかもしれません。

 

生まれ持った特性に対し、親がプラスに考えられるかどうかは子供の成長にも影響を及ぼします。

「吃音が治らなかったらどうしよう…」と常に不安げな顔をしている親の元で成長するのと「吃音が残ったとしても何とかなる!」と考えている親の元で成長するのと、どちらの方が子供にとっていい環境かは明白です。

吃音を楽観視しているわけでは決してありません。

医師や言語聴覚士さんなどから適切なアドバイスを受け、その時々で子供に最適な環境を用意し、できる限りのことをやった上で吃音が残ってしまったなら仕方がない、吃音が残ったって何とかなる!とある意味開き直りの感情を親が持つことは私はとても大切だと思っています。

子供の吃音を受け入れる、じゃあこれを改善するためにはどうしたらいいか、それでも改善しなかった場合はどうしたらいいのか、親がしっかりと吃音に向き合って対応していく姿が子供の一番の特効薬かもしれませんね。

おわりに

まだまだ吃音症に対する正しい理解が浸透していない日本の現状。

日本人は諸外国の人と比べ、他人と同じかそうでないかの線引きが非常に強い民族だと言われています。

ほんのわずかな違いに敏感な民族ですが、反面、一度仲間にすると結束が強い一面も併せ持ちます。

早いうちから吃音症を理解してくれる仲間を持つことは、子供本人にとっても支える親にとっても大きな支えになることは間違いありません。

「そのうち治る」「そんなに深刻ではない」と親が勝手に判断してしまう前に、医師や言語聴覚士に相談して現状を見てもらいましょう。

そのうえで今後どうするか判断しても遅くはありません。

発達を促すには最適な時期というものがあります。

何年も経ってからやっと取り組んだとしても、早期に取り組んでいた場合と比べると結果に大きな違いが出ることが多々あります。

「子供のために今何ができるのか」。

後々後悔しないためにも今行動していきましょう。

 

吃音症を抱える子供達が、一人でも多くの理解ある仲間達に恵まれますように______。

吃音症をもっと知りたい方に。自らも吃音を抱える医師が監修。
イラストでの解説が多いのでとても分かりやすく、30分ほどで読み終えることができます。
吃音症を知るための導入書として最適です。

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