体調や精神面など、普段と同じ量なのに日によってお酒が効きすぎてしまうという経験は誰もがしたことがあるでしょう。
「あれ?今日はやけにアルコールが効くな…」と自覚しているならまだしも、周りにいる人が引くほどの言動を繰り返すことはやはり普通ではありません。
それが兄弟若しくは親子そろって酒癖が悪いとなると「遺伝」という文字が浮かんでしまいますよね…。
酒癖の悪さは一体どこから来るのでしょうか。
酒乱は遺伝??
それでは酒乱について解説していきたいと思います。
「酒乱」とは?
酒乱とは、アルコールの作用で脳内の大脳皮質が麻痺し、社会的な規範を逸脱する言動が出ている状態、またはそうした状態にしばしば陥る人を指します。
要は、アルコールを摂取すると性格がガラリと変わって、過激な発言をしたり、問題行動を起こす人のことを「あの人は酒乱だ」というそうです。
一言で酒乱と言えども程度には差があり、酒乱傾向があるとわかっていても憎まれることなく「またこの人と飲みたい!」と思ってもらえる人もいれば、「この人とは2度と一緒に飲みたくない」と避けられる人もいます。
同じ酒乱なのになぜこのような差が出るのでしょうか。
答えは、アルコールがもたらす大脳皮質の麻痺のレベルには個人差があるからです。
体内に侵入したアルコールの作用で行動が短絡的・暴力的で場合によっては犯罪に結びつくレベルになる『悪性酒乱』とも言える状態になると、道徳的な規範などが守れなくなっている状態に陥っていると考えられ、周りに多大な迷惑をかける人物として敬遠されることは免れないでしょう。
しかしそこまでいかず、「ちょっとのことで感動してみんなの前で泣いてしまう」「なんてことない話なのに大笑いが止まらない」などは見ている周りも普段とは違う様子に面白さを感じるため「また一緒に飲みたい」と感じてもらいやすい傾向があります。
2度と一緒に飲みたくないと思われるのは、
・一緒にいると身の危険を感じる
・いつ周りへ迷惑をかけるか…とハラハラさせる
・同類だと思われたくない
という気持ちが相手に大きい場合が主です。
あなたは大丈夫そうですか??
酒乱の原因は??
酒乱の原因は「遺伝的要因」と「環境的要因」です。
特に「遺伝と酒乱」は切っても切れないくらい関係性が大きいようで…。
【遺伝的要因】酒乱に深い関係性のある2種類の遺伝子
父親・母親の両方の遺伝子を持って子は生まれてきます。
お酒に関してもその作用は大きく、親から受け継いだ遺伝子の種類によりアルコールの分解能力が決まり、お酒を飲んだ時に酒乱傾向になるかならないかの違いが出てくるそうです。
酒乱になるかどうかは、ADH(アルコール脱水素酵素)の中のADH1Bという遺伝子と、ALDH(アセトアルデヒド脱水素酵素)の中にあるALDH2という遺伝子の組み合わせが酒乱パターンに合致してしまうかどうかによります。
ADHの遺伝子パターン
ADHの中にはADH1Bという遺伝子があり、ADH1BにはADH1B1型とADH1B2型の2種類があります。
1型だとアルコールの分解速度は速く、2型だと分解速度が遅い傾向にあるとのこと。
遺伝子は両親から一つずつ受け取るため、
・父母どちらからも1型をもらう人
・父母どちらかから1型をもらい、もう片方から2型をもらう人
・父母どちらからも2型をもらう人
の3パターンが存在することになります。
ALDHの遺伝子パターン
ALDHの中にあるALDH2という遺伝子も、アルデヒドの分解能力が高いALDH2・1型と分解能力がないALDH2・2型の2種類があり、両親からそれぞれ1つずつもらい受けます。
遺伝子の組み合わせはADH1Bと同じく、
・父母どちらからも1型をもらう人
・父母どちらかから1型をもらい、もう片方から2型をもらう人
・父母どちらからも2型をもらう人
の3パターン。
特徴は、ALDH2・1型はアセトアルデヒドを分解する能力に長けているのでそこそこの量が飲めてしまう。
逆にALDH2・2型を持っている人は、アルコールを摂取すると顔が真っ赤になったり、気分が悪くなってしまういわゆる下戸タイプ。毒性の強いアセトアルデヒドを分解する能力が弱いためにこのような現象が出るそうです。
酒乱に最も近い組み合わせは…
アルコールに関わる医療で日本をリードしている久里浜医療センター(当時は国立療養所久里浜病院)に勤務していた医師の話では、仲間10数人の遺伝子パターンを調べた上でそのメンバーで飲み会をすると、ADH1Bに関して両親から2型を2つもらっている人に酒乱の傾向が見られ、1型2つは量を飲んでも素面の時とあまり変わらない、1型と2型を1つずつ持つ人は2型2つと1型2つのちょうど中間をとった飲み方をしていた、という結果が出たそうです。
ALDH2の遺伝子パターンも加えて考えると、1番酒乱になりやすいのはADH1B2型を2つ持ち、かつALDH2・1型を2つ持つ遺伝子パターンだそうで、アルコール分解速度が遅いけれどもアセトアルデヒドの分解能力はあるため量が飲めてしまうという、という人に酒乱傾向が強く出るのでは、とのことです。
難しいことをたくさん書きましたが簡単に言うと両親や近い親族にお酒で豹変する人がいる場合は、あなたもその傾向が強い可能性が高いのでお酒を飲む際には十分に気を付けてください!
【環境的要因】
環境的要因と言ってもどのような環境の人に多いとは個人の性格によるところもあるので一概には結論付けることはできませんが、「普段から抑制を強いられている人」に酒乱の傾向は強いのでは、と考えられています。
いつもなら理性で感情の抑制ができているのに、お酒を飲むことにより脳内が麻痺し、理性が働かなくなるために日頃ののうっ憤やストレスを爆発させやすいのではないか、というのがその理由です。
そのほか、真面目な人、完璧主義者などもこのパターンに該当しやすいそうです。
【余談】酒乱の親を見てきた子供
ここから完全に余談になりますが、私が20代の頃、いわゆる「酒乱」と言われる人物に2人遭遇しました。
1人は気に食わないことがあると暴れる酒乱(♂)。
相手が他人だろうが自分の恋人であろうが、いつでもどこでも気に食わないことがあれば暴力暴力。。。それはそれは一緒にいたくないなぁ…と思わせる相手でした。
聞いた話によると、居酒屋で居合わせた客と険悪になり、ビール瓶で殴ったこともあるとか…。
2度と彼には会いたくありません。
もう1人は気分の浮き沈みが激しい酒乱(♂)でした。
友人同士で旅行に行った際、大人数の飲み会にて酒乱のスイッチが入り「自分はダメな人間だ」と愚痴りだし楽しい場を凍り付かせる。みんなが励まそうが「俺なんか…」と自分で勝手に追い込みをかけ、大泣きし、挙句の果てに「もう死んでやるーーー!!!」と叫んでその場を飛び出し行方をくらますという迷惑っぷり。
旅行先での出来事なのでみんな土地勘もなく、本当に何かあったら困るので飲んでる途中で彼の捜索開始。
携帯電話にかけても出ないし、ほろ酔いの仲間たちも一気に素面に戻って大探し。
どこに行っていたのかは不明ですが、数時間後に何食わぬ顔でホテルに戻ってきました…。
もう絶対一緒に飲みたくない…。
私が出会ったのはこの2つのパターンでしたが、実際はもっといろんな酒乱がいるでしょうね。
この2人には、幼いころから父親がお酒を飲んで暴れる姿をたびたび目撃していた、という共通点がありました。
母親が父親に手を挙げられる姿は幼心に怖かったに違いありません。
そんな父親の粗相を謝罪しに回る母親を見て、自分はあんなことは絶対にしないと誓った日もあったでしょう。
父親の変貌に「ああなりたくはない」と2人とも思っていたそうですが、遺伝子と記憶には逆らえなかったのか…親と同じ過ちを繰り返してしまっています。
大人が暴れる姿は子供にとって恐怖以外の何物でもありません。
もし近くにいる人間が酒乱傾向にあるのであれば、少なくとも幼い子供の前で醜態をさらけ出すことだけは避けてあげてください。
子供心に傷として残り、トラウマになりかねませんので。
おわりに
楽しいはずのお酒の席が、一生忘れられない嫌な記憶として残ってしまうのって本当に嫌ですよね。
酒乱であってもそうでなくても、自分の適正量をわかっておくことは自分の身を守るためにも非常に大切なことです。
身近に酒乱傾向のある人が存在している人は、何としてでも負の連鎖を断ち切ってほしい!
酒乱は周りにいる人達の信頼を失い、不幸にもします。
理性がきかないって恐ろしいことだなって改めて思わされました。
皆さんもお酒は飲んでものまれるな!!の精神を忘れずに、アルコールとうまく付き合ってくださいね☆
お酒の飲み方に不安がある…という方へ。
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