タワーマンションがたくさん建設されている現代。
立地が良く、眺めもきれいで、住み心地のいい間取り。
1度は住んでみたいと憧れを持つ方も多いようですが、色々調べてみると高層階には心身に影響を及ぼす様々なリスクがあるようです。
高層階に潜む危険
心停止で回復した人の割合が25階以上では0%
カナダの研究グループがトロント市内などの高層マンションで心停止で運ばれた人8,216人を対象に2007年からの5年間調査を行いました。するとマンションの高層階に住む人は低層階の人に比べて心臓が停止した場合に生き延びる確率は低いという結果が出たのです。
具体的には、1~2階に居住していた人は4.2%が生きて退院できたのに対し、3階以上では2.6%、16階以上では0.9%、25階以上では0%と衝撃の数字が並んでいます。
1分1秒を争う緊急時にエレベーター待ちなどの余計な時間がかかることから救命措置が遅れ生存率が低いと言われており、緊急時専用のエレベーターの設置や各階にAEDの設置を義務付けるなど、高層階の住人の生存率を上げるための工夫が必要です。
流産の確率が上がる?
高層階ほど流産の可能性が高くなるとの調査結果があります。
今から25年前の1994年、神奈川県の1200人の妊婦を対象に居住空間や生活環境と流産の因果関係が調査されたことがありました。
その調査結果では流産の割合は、一戸建てで8.2%、マンションなどの集合住宅の1~2階で6.8%、3~5階で5.6%、6~9階で18.8%、10階以上で38.9%と高層階であればあるほど高い数値が出たのです。(高層階に居住した年数や妊婦さんの年齢、遺伝的要素なども因子の一つと考えられるので、このデータは信憑性がないと異論を唱える人も多くいます。)
気圧が低いことと、高層階ほど常に微振動があり身体に負担となっていることなどが原因ではないかとされているそうですが確証はありません。しかし他国でも高層階ほど原因不明の流産率が高くなるとの調査結果が出ており、因果関係は否定できません。イギリスでは妊婦は4階以上には住んではいけないと法律で規制されていたり、アメリカでも一部の州で高層ビルに高さ制限を設けるところもある(景観を損ねるから、との理由も含まれる)そうです。
日本では都市伝説として片付けられてしまっているこの問題。もちろん高層階だからという理由だけで流産が起こるわけではないですが、他国では行政が規制を促しているので何かしらの影響があるように思えてなりません。
運動能力、コミュニケーション能力が低下傾向
高層階に住んでいる人は戸建てや低層階に住む人に比べて外出頻度が低いというデータがあります。エレベーターを待って下まで降りてマンションのエントランスに出るまでの距離も時間も長いのが原因ではないかと言われていて、その傾向は大人でも子供でも共通しているそうです。
大人はまだしも子供にとっては家にずっといることは好ましくありません。公園で友達と走り回って遊んだり、会話を楽しんだり、遊びを通して得られるものが子供達にはたくさんあります。子供同士の世界を楽しみながら様々な能力が身についていくというこの絶好の機会を失うことは子供にとってはかなりの痛手とも言えます。
低体温児、喘息、アレルギー性鼻炎になりやすい
前出のとおり高層階に住む子供は外出頻度が少ない傾向にあり、身体を動かす機会の少なさから低体温児が多いそうです。幼稚園児を対象に起床直後の体温を計ったところ、36度未満の体温の子は1~2階に居住している子供では全体の2割強だったのに対し、10階以上に住む子供では全体の3割強、というデータもあります。
また、マンションは気密性がいいため換気をこまめにしないとダニやカビが短時間で発生しやすいにもかかわらず、高層階は風が強い、転落の危険がある、とのことで窓を閉め切った状態でいることが多く(そもそも窓が開かないところもある)、それが原因で喘息やアレルギー性鼻炎を患う傾向が高くなるのだとか。換気システムがあったとしてもこれらの疾患を防げるほどの効果はないようです。
子育てするなら低層階
外遊びに気軽に出かけられるように4~5階くらいの高さまでが良さそうです。教育の専門家の話によると、窓の外を見て季節を感じること、外から聞こえる風や虫の声などは、人間の五感を大いに刺激し、成長に欠かせないものだそうです。
季節の草花を発見することや、季節の行事(花見、夏祭り、稲刈りなど)を体験することで時間の移ろいを感じることができ、また時間の価値も理解し、家族や周りの人間に感謝もできる。
高層階など、窓から季節を感じられない空間で育った子供は感情が育ちにくく、思いやりに欠ける、問題行動を起こす割合が低層階で育った子供の12倍との統計まであります。外出しにくいので人と接する機会が少なく、関係作りが苦手、というのも一因かもしれませんね。
すぐに外に出やすく季節を感じやすい環境で、のびのび健全に育つことの大切さを改めて感じます。
終わりに
高層階に居住しているというだけでこれだけ様々な問題があることを初めて知り、調べていて驚くことばかりでした。
大人にとってはステイタスだったり利便性を感じるタワマンでも、子供達にとっては住むにはあまりいい場所ではないのかなというのが率直な感想です。
地方の若者は東京などの都心にあこがれを持つ人も少なくないでしょうが、自然を感じながら生きていくことは現代ではとても贅沢なことなのかもしれません。
昔からずっと地面に近いところで生きてきた人間にとって土から遠く離れて暮らすことはある意味不自然で、容易ではないのかもしれませんね。
タワマンなどの(超)高層マンションへの居住を反対している専門家が多い中、どんどん建設され売りに出される多くの物件。
高層階へ居住する前に健康的に過ごせる場所なのかどうか自分自身の目で実際に確かめ、徹底的に調べることが必要なようです。
コメント