2018年に行われた調査によると、世帯全体の所得金額(年金や保険も含む)の平均は552万3000円。
児童がいる世帯では、働き盛りの父親とパート収入で家計を助ける母親の共働き世帯が多く、平均所得は745万9000円と高めに推移しています。
親の経済力が子どもの教育格差を生むことが懸念されている現代で、環境に左右されずに学力をつけるにはどうしたらいいのでしょうか。
幼少期から始まるといわれる教育格差
最低限の衣食住は何とかなるものの、世間でいうところの「普通の生活」をすることが困難な家庭が日本では拡大の一途をたどっています。
2018年の調査によると、日本に住む17歳以下の子どもの相対的貧困率は13.5%で、子どもの7人に1人は相対的貧困状態にあることがわかっています。
その国、その地域における生活水準と比較して困窮した状態、世帯の所得がその国の等価可処分所得の中央値の半分に満たない状態を指します。
※等価可処分所得とは税金や社会保険料などを差し引いた手取り金額を世帯員数で割ったもの。
その一方で、ベネッセ教育総合研究所が15年間にわたり首都圏在住の幼児の保護者にアンケートをとった結果、6歳児で8割を超える子ども達が習い事をしていることが明らかとなりました。
「教育は早いうちから」と考える親は多く、教育格差は幼少期にはすでに始まっていると言えるでしょう。
貧困は連鎖する
最も怖いのは、親の貧困は子どもにも連鎖することです。
わかりやすいように図で描くとこんな感じです。
引用:キッズドア
収入と教育、教育と就職、就職と収入…というように、それぞれが互いに深い関係性を持っていることがわかりますね。
ただしこれは限られた家庭の話ではなく、どの家庭にも起こり得ることだということを私達は自覚しないといけません。
負の連鎖はどの家庭にも起こり得る
今ゆとりある穏やかな生活をしている家庭でも、将来もずっとそれを維持できるかどうかは誰にもわかりません。
家族が突然病気や災害で亡くなったり、事情により離別する可能性は誰にでも起こり得るリスクです。
一家の稼ぎ手を失った場合には必然的に事態は急変を余儀なくされ、苦しい生活を強いられることも珍しくはありません。
少しでも状況を打破するためにダブルワークやトリプルワークなど無茶な働き方をすることで身体も心も疲弊し、親が病気になるケースは少なくない現実です。
そうなると子どもが親の介護をしたり代わりに働きに出たりと日々の生活で精一杯になり、学業どころではなくなってしまいます。
このような負の連鎖に陥りそうになったとき、親が子どもの学業のためにしてあげられることを考えてみたいと思います。
経済力のある家庭とない家庭の決定的な違い
まずはこちらをご覧いただきましょう。
お茶の水大学教育学部(当時)の耳塚教授が小学6年生1200人の児童と保護者を対象に、経済力と学力の関係性について調べたデータです。
図を見ても明らかなとおり、年収が高い家庭の子ほど1日の勉強時間が長く、テストの点数も高いことがわかります。
この差の根本原因は«親の意識»。
教育の大切さを知っている親の子ほど、当然ながら成績は高い傾向にあります。
もっと深く掘り下げていくと、«親の成功体験の有無»。
『勉強していて良かった』という親の成功体験がもととなって「子どもにも教育を」という意識に繋がっていることは間違いなく、それがプラスの連鎖として子や孫へと受け継がれていくのです。
成功体験というのは、受験の成功・失敗だけの話ではありません。
勉強を頑張ったという自信、勉強を教わった先生や共に頑張った仲間との絆、親に褒められた経験、卒業後の進路の幅など、勉強に付随するすべてのことが一つでも自分の経験としてプラスになっているのならばそれは成功と言えるでしょう。
学業を頑張った親にしか見えない世界、その経験値が子どもを引き上げる大きな力となるのです。
決定的な差は、親自身の価値観。
親自身が勉強する価値を知っているか知らないか、ただそれだけの、されどとても大きな差。
もっと言えば、お金さえあれば負の連鎖を断ち切れるという単純な問題ではなく、前提として子どもに関心があるかどうかです。
生活レベルの低い家庭は子どもを放任している率が高い傾向にあります。
子どもの希望を叶えるために親自身が最大限の努力をできるかどうか。
そのあたりが子どもにダイレクトに影響を与えることを賢い親は知っています。
親の関心が自分にないと悟った子どもは自己肯定感が極端に低く、「どうせ自分なんて…」と幼いうちから人生を捨ててしまうような考えにとらわれがちになり、勉強・努力をしなくなります。
お金がないから成績が悪いというよりは、親の子どもへの関心の少なさが子どもの自己肯定感を低くし、それに学業が引きずられているといった感じですね。
誤解のないように言っておきますが、学業・学歴が全てだとは私は思っていません。
ただ、学歴で人が(ある程度)判断できることは事実です。
学歴や人柄はその人の背景(親の教育)も映し出されます。
決して軽んじることのできない大切な事項。
そのことを理解しているのは、やはり高学歴な親が多いのです。
不利な経済状況でも頭のいい子。その秘訣は?
ネット上でも学力は経済力格差によるところが大きいとする記事は多くあります。
しかし経済的に苦しくても学業の優秀な子は存在しており、必ずしも経済力だけの問題ではありません。
お金がなくても優秀な子。
親がどのような養育をしているのか見ていきたいと思います。
子どもは親を真似ている
簡単に言ってしまえば、「努力ができる親の子どもは努力ができる」のです。
経済力が不利な家庭でも、親が読書家だったりすると子どももそれを真似て読書の好きな子に育ったり、勉強家なら子どもも進んで勉強をする子になりやすい。
経済力以上に親からの影響が果てしなく大きいということですね。
・朝食を必ず食べさせている
・子どもに規則正しい生活をさせている
・ゲームやスマホを触る際のルール(時間)を決めている
・子どもの将来について話し合う機会が多いなど
上記の項目は、経済力に恵まれているとは言えなくても勉強のできる子の家庭に共通している事項。
経済力に恵まれてさえいれば勉強ができる子になるということではなく、幼いころからの習慣や親の接し方で学業が左右されるのです。
子どもの質問に知らんぷりしたりすぐに答えを教えてしまうようなこともしません。教科書や辞書を一緒に調べて、子どもに調べさせる習慣を付けさせることも学業が伸びる秘訣です。
自分で調べて解決できる力を持つことは学業だけでなく社会に出てからも必要なスキルなので、ぜひ幼いころから習慣として取り入れたいところですね。
図鑑をきっかけに勉強好きになる子も
昔も今も子どもの教育に欠かせない教材として君臨しているのが“図鑑”です。
特に今の図鑑は子どもの興味を掻き立てるような内容になっていて、親子で楽しめるのが特徴です。
教育評論家の親野 智可等氏も今の図鑑について、
写真やイラストが以前のものに比べてはるかに美しく迫力があるものが増えました。また、単に多くのものを羅列的に紹介するだけでなく、面白く読めるミニ知識や興味深いコラムがたくさん挿入されるようになりました。また、動画を収録したDVDがつくものも出て、これが大評判になり非常によく売れています。
なぜ私がこれほど図鑑に注目するかというと、これが子どもたちの学力の底上げに大いに役立ち、勉強好きに変えるきっかけになると考えるからです。
たとえば、面白いテーマ型図鑑を絵本を読むように読んでいるうちに、文字の習得が進みます。つまり、平仮名や片仮名はもちろん、漢字もどんどん読めるようになるのです。見出しや説明の文章には漢字がかなり使われていますが、すべてルビがふってあるので、学校で習っていない漢字もどんどん読めるようになるのです。
引用:ここまでやる!できる子の「図鑑のある生活」 | 子どもを本当に幸せにする「親の力」 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準 (toyokeizai.net)
と、学力を習得するきっかけに役立つと太鼓判を押していらっしゃいます。
我が家の息子(6歳)も去年あたりから動物図鑑が大好きになり、周りのお母さん方にも聞いてみたところ、図鑑に興味を持つ子が意外に多いことがわかりました。
その子の興味の向くところにもよりますが、女の子でも恐竜図鑑が大好きで毎日見ているという子もいますし、男の子でも植物図鑑が大好きという子もいます。
うちの10歳の娘は星座図鑑が大好きですし、本当に様々です。
図鑑の選び方
図鑑は安いものではないですし、できる限り長いこと使ってほしいと思うのは親としては当然の心理です。
でもだからと言って高度な内容のものを選んでしまうと子どもには難しすぎて面白くなく、結局役に立たなかったということも起こりえます。
大切なのは「親目線」ではなく「子供目線」です。
子どもが楽しく読めるかどうか、ただそれだけです。
我が家が愛用しているのは小学館。様々な種類の図鑑が出版されています。
※図鑑を読むきっかけとしてとても優秀なのが図鑑に付随しているDVD。映像を見たことで「もっと知りたい!」と興味を持って図鑑を開くという素晴らしい仕組み。図鑑もDVDも子どもが興味を持つようにうまく作られているなぁ…と感心してしまいます。
図鑑は知的好奇心をアップさせるのにとても役立つので、学業の入門に効果を発揮してくれます。
【余談】学歴がすべてではないがそれなりの知識力は必須
昔に比べてネットワークが格段に発達し、ネット環境さえあればお金が稼げる時代になりました。
子どもでも稼いでいる例が多数あり、今の子ども達の中にはすでにYouTuberになっていたり、将来YouTuberになりたいと夢を語る子も多く存在します。
ネットさえあれば何とかなるのでは?という安易な考えに走る人は大人も子供も絶えず、大半がその難しさに耐えかねて散っていきます。
なぜそうなるのか?
それは「簡単に稼げそう」なものほど頭を使うということに気付いていない人が多すぎるからです。
誰でも簡単に稼げるなら貧困に陥る人などいません。
自分で起業して社会に出る人も多くいますが、どうやって稼いでいくのかを常に綿密に計画していく力は欠かせません。
計画性のないものには早い段階で終わりが訪れます。
社会に出る上で共通している事項は「自分で考える力、自分で調べるクセ」が必要不可欠であるということ。
その力は幼いころからの積み重ねにより成り立っていきます。
幼いころから何もやってこなかった子が大人になった途端に色々できるようになるかと言えばそうではありません。
大人になってからの長い時間をできるだけ不自由なく生きていく術を身に付ける訓練はすでに子どもの頃から始まっていて、子どもは身近な親からそれを自然と学んでいます。
経済力があってもなくても子どものお手本は親なのです。
親の習慣は子どもの習慣。
そこを理解している親は案外少ないのかもしれません。
おわりに
親の意識がどれだけ子どもに影響するのかお分かりいただけましたでしょうか。
色々書いてきましたが私も親としてはまだまだ未熟で、書きながら反省することが多かったです。
とにかく子どものために親がどこまで関わりを持てるか、必死になれるか。
結果的に達成できなかったとしても、親が自分のために必死でやろうとしてくれていた姿は子どもの心には深く刻まれ、その後の人生に大きく影響していくでしょう。
経済力がないから…と諦める親子が一組でも減ることを願います。
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