つい先日、メイプル超合金のカズレーザーとぺこぱの松陰寺太勇が対談した際「大食い番組の仕事は嫌」と意見が一致し、「何で許されているんだろう」「フードハラスメント」など厳しい言葉で大食い番組に対する苦言を呈していたことが話題になりました。
その中に「教育上よくないと度々言われているのに…」との言葉もあったため、子どもが大食い番組から受ける影響について考えてみました。
中国では大食いに罰則も
日本だけでなく世界でも大盛り料理をどんどん平らげていく大食い動画は人気があり、中国でも『大胃王(大食いをする人)』のコンテンツは非常に人気の高いものでした。
しかし昨年の8月に習近平国家主席が「中国国内の飲食の浪費現象は深刻で心を痛めることであり、法整備を含め“食べ物の浪費”を断固阻止する」と対策を命じ、それから約8カ月後の今年4月29日に「反食品浪費法」が可決されました。
「反食品浪費法」は食べ物を食べきれないほど注文した客にもそれを提供した店側にも罰金を課すという法律で、違反すると飲食店側には日本円で約17万円の罰金が課されてしまいます。
かなり厳しいともいえますが、今回の法律により最も窮地に立たされたのが『大食いユーチューバー』。
過去の動画は運営サイトに削除されてしまい収入が途絶えた上、大食い動画をアップすると日本円で約170万円の罰金になるという、まさに泣きっ面に蜂状態。
このような事態に至った背景に、アメリカとの関係不和によりアメリカからの食料の輸入が途絶えるリスクがあるためともされていますが、個人的にはどんな理由であれこの対策は称賛されるべきものではないかと思っています。
というのも、中国には食べきれないほどの量のご馳走を客人にふるまうというのが習慣としてあり、食べきれなかった料理の廃棄量は年間約1800万トン、実に5000万人が1年間食べていける量に該当しているからです。
フードロスは中国だけの問題ではなく、世界で問題視されるべき事項。
日本でも中国と同様の法律を、と望む人は少なくありません。
大食い番組の闇
中国の大食いYouTubeは、食べているように見せかけて机の下のバケツに捨てているなどヤラセも多かったとのこと。
では日本はどうかというと、SNSには大食いの観覧をした人や番組制作者からの生々しい声がたくさん溢れていて、かなり闇がある様子。
特に多いのは、TVの企画で大食いした後、トイレで吐いているのが当たり前との情報。
吐きやすくするために水を大量に飲んでからトイレに行くとか、吐き慣れているから手に吐きだこができているとか、トイレに間に合わない時のために机の下にバケツを用意して収録しているとか、当たり前のようにまかり通っているようです。
もしその情報が本当であれば、食料を育ててくれた人や料理を作ってくれた人に対して失礼な行為であり、いくらテレビを盛り上げるためとは言え許せることではないのでは…と感じています。
過去には死亡例も
大食い・早食いではたびたび死亡者が出ています。
2019年4月8日、YouTubeでライブ配信をしていた女性が「赤飯」のおにぎりを一口で食べ、そのまま意識不明になったとみられる事故。女性がその後死亡したと、本人のTwitterに親族名義で書き込みがあった。
YouTube上には「大食い」や「早食い動画」も多く存在している。医師は「やるべきではない」と警鐘を鳴らしている。
中学生が大食いを真似て給食を食べ、のどに詰まらせ死亡したことも…。
愛知県のとある中学校で男子学生が給食で出されたパンを喉に詰まらせて、窒息死してしまったのです。
事件当初、なぜ男子学生がそのような死に方をしたのか、学校側は不明としていました。しかし警察が捜査を行った結果、テレビで放送されている大食い番組のマネをしてクラスメートと早食い競争したために起こった事故だと判明します。
この事故は2002年に起こったそうで、これを境に大食い番組がめっきり減ったとの情報も。
なんとも後味が悪いです。
子どもへの影響は?
長々書いてきましたが、ようやく本題に入りますね。
大食い番組がなぜ子どもの教育に良くないのかを考えていきます。
①子どもはテレビの影響を受けやすい
先ほどの中学生の事故でもそうですが、子どもはテレビで見たことをそのまま信じ実行してしまうことがあります。
「自分にもできるかも」という好奇心が思わぬ事故に繋がることもあります。
②食べ物への感謝が感じられない
食べ物に対する敬意って、美味しく最後までいただくことだと思います。
それを苦しそうに口に詰め込み無理矢理食べる姿は、作り手や育成者への感謝の念を感じず、料理への冒涜にすら感じることがあります。
美味しく、きれいに、感謝して食べるという当たり前の作法が軽んじられてしまう恐れがあります。
③食べ方のマナー
最近の大食いの方達はまだいいと思うのですが、たまに過去の大食いチャンピオンなんかが出てくると見るに耐えない食べ方をしている方が多いのが気になります。
手掴みで指はギトギト、口の周りはベタベタ、飲み込めないのか頬っぺたを膨らませてずっとモグモグ…。
大人のその姿は見ていてとても汚らしく、子どもには見せたくない映像です。
食べ物を粗末にしているように感じたり、食べ方に問題があったりするため、子どもには見せたくないと考える親は増えているようです。
一方でプラスの面も…
大食い番組を見たことにより、全然食べられなかった子が頑張って食べるようになったり苦手なものにチャレンジしたり…というプラスの面もあるそうです。
今はフードロスを考える時代
大食いの流行った1990年代半ば~2000年代前半と現代とでは世界の状況は変わっています。
TVも「面白ければなんでもやっちゃえ」という時代から、節度ある番組構成を求められる時代に変わっていますし、世界レベルの難しい問題でいくと地球温暖化、水・食糧不足への懸念など、直ちに何とかしなければいけない課題が山積みです。
温暖化により作物が育たなくなる可能性、水が干上がる可能性、それにより食料が減少する可能性など、遠くない未来にそのようなことが高い確率で起こることがわかっているのに、逆行するようなことを平気でやっているのが不思議でなりません。
廃棄される食品を減らす動きは各国で出ていますので、今この時代に大食い番組をやることは白い目で見られるほうが多いのではと思います。
撮影中や撮影後に吐いているとなればなおさら…。
日本からも大食い番組や大食い動画が消える日も近いかもしれません。
おわりに
色々書いてきましたが、実は私は最近まで大食い番組が割と好きなほうでした。
見たことのない大きなお皿にたくさんのお料理。
大量の食べ物がどんどん減っていくのがとても爽快に思えたのです。
ところがある日長女(10歳)に言われました。
「大食い番組は苦手。美味しく食べてないのがわかるから悲しくなる」と…。
その言葉を聞き、「そんな風に子どもには見えていたんだ…」と衝撃を受け、子どもにとって悪影響なのかな…と感じるようになりました。
昨年、習近平国家主席は「皿の上の一粒一粒が人々の苦労のたまものだと知るべきだ」というメッセージを国民に向けて発信しています。
いや、ホントそれ。
その言葉はとても重く、食に感謝することへの大切さを改めて思い知ったような気がしました。
世間では「苦しそうにデカ盛り食べている番組より、美味しいものを美味しそうに食べて紹介する番組がいい」との声も多く、食べ物を無理に食べることへ疑問を持っている人が多いことがうかがえます。
大食い番組は今逆風にさらされています…。
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