【抜毛症(ばつもうしょう)】という言葉をご存知でしょうか??
小学生でも発症することのある精神疾患に分類される病気で、ストレスや不安を解消するために美容目的以外で自分の髪の毛(または体毛)を抜いてしまうという症状があります。
この抜毛症、放っておくと本人の心の負担がどんどん増してしまう恐れがあるため、親が子供をよく観察してあげることが必要です。
抜毛症ってどんな病気なの?
不安やストレスから一時的に逃れるために体毛を抜いて気分を落ち着かせる、というのがこの病気の特徴で、症状は人口の1~2%の人に見られ、罹患者の90%が女性です。
「髪の毛を抜いてみたら気持ちよかった」などのふとしたことがきっかけとなり、それが継続してしまった…という方が多く、不安やストレスを感じた時により行動を起こしやすい傾向にあります。
女性に患者が多い理由として、ホルモンバランスの変化が関係していることがわかっており、初潮を迎える小学校高学年頃~思春期の子供達が特に発症しやすい年齢です。
一般社団法人日本抜毛症改善協会の2017年9月~2020年9月現在の474名のデータを参考に見てみましょう。
罹患者の性別
罹患者の年齢
通院の有無
服薬の有無
参照:2020年9月現在の 抜毛症 統計の発表一般社団法人日本抜毛症改善協会 | 一般社団法人 日本抜毛症改善協会 (tricho.jp)
上記のグラフからもわかるように、15歳までに発症した子供は約25%。年齢が高い層は、若い頃に発症してそれが改善されずにそのまま継続しているケースが含まれています。
驚くのはこのデータの対象となった罹患者の最低年齢。なんと3歳の女の子もいるそうです。
抜毛症自体、日本での認知度はまだまだ低めですが、誰にでも起こる可能性のある身近な病気であると言えるのかもしれません。
脱毛症との違いは??
抜毛症と脱毛症。
どちらもストレスが原因の一つであることと、髪の毛が抜けてなくなるという点では共通していますが、決定的な違いがあります。
●脱毛症→意思に関係なく抜けていく
自らの意思の有無によるところが大きな違いですが、抜毛症は精神疾患なのに対して脱毛症は皮膚疾患であるという違いもあります。
同じように思える疾患でも診療科も治療法も全然違いますので間違えないようにしましょう。
子供と抜毛症
抜毛症の子供達は、髪の毛を抜く行為はいい行為ではないと理解している場合が多く、でもやめられないという葛藤の中、家族に隠しながら抜毛を行っていることがほとんどです。
ですので親が知ったときにはすでにかなり進行してしまっていることも珍しくありません。
後のハンデになる前に
たかが毛を抜くという行為ですが、自分を傷つけることを継続しているのはやはりよくありません。
なぜなら、何気なしに毛を抜くという行為が将来を左右してしまう場合もあるから。
特に目に見える髪の毛、眉毛、まつげなどを抜毛してしまう場合、何度も繰り返していくうちに毛が細くなったり生えてこなくなったりしてしまう可能性が高くなります。
そうなると今度は自分の見た目がコンプレックスとなり、人に会うこと、外出をすることを避けるようになるでしょう。楽しい時間を自分でどんどん潰すことになり、それがストレスとなりまた抜毛してしまう…という負のループに突入してしまいます。
実際「風の強い日は外出できない」「温泉やプールにはいけない」という悩みを持った人たちは存在していて、友人関係や恋愛関係に消極的になりがちに。
もしそれを改善できる可能性があるなら、やってみたくないですか??
こんな時は抜毛症を疑おう!
抜毛症の子どもはそれを隠す傾向にあるとお伝えしましたが、お子さんの行動でもチェックすることができます。
①帽子ばかりかぶっている
②いつも頭(身体)の一部分を隠すような髪型(服装)をしている
③(思春期の場合)アイメイクが濃すぎる
④髪型が崩れることを非常に嫌う
その他、実際に抜毛シーンを目撃したり、ゴミ箱から髪の毛が大量に出てきたなどで気付くケースもあります。
抜毛症はSOSのサイン
子どもが自ら髪の毛をプチプチ抜いていると知ったら、大抵の親は驚きと悲しみに包まれ、「なんでそんなことをするの!!」と叱ってしまうのではないでしょうか。
でも…
子どもだってやめたくてもやめられないのかもしれません。
気持ちのガス抜きをする方法が今はそれしか思いつかないのかもしれません。
「助けてほしい」と素直に言えないからそのような行動をとっているのかもしれません。
抜毛症を発症するお子さんは、我慢強く、頑張り屋さんの子が多いそう。
「こんなこと言って親を困らせたくないな…」「こんなこと言ったらがっかりされるかな…」など、周りからの評価や自分のプライドを保つために気持ちを発散させることができず、そのような行動をとってしまうようです。
「助けて」「すごく困ってるの」「抱きしめてほしい」「甘えさせてほしい」などをなかなか言葉にできず、毛を抜くことで心の安定を保っているのかもしれません。
抜毛症を発症した人でなければ理解がなかなかできないかもしれませんが、SOSを発信していることは事実です。
まずは叱らず、話を聞いてあげてほしいです。
気持ちに寄り添ってあげてください。
「いままで我慢してたんだね、辛かったね」と声をかけてあげてください。
「気付いてあげられずにごめんね。一緒に乗り越えようね」
その一言で子供は本当に救われます。
「この子はしっかりしているから大丈夫」と親が思っているような子でも、しっかりしないといけないというプレッシャーがストレスになっていることが実は多くあります。
不満や甘えを口に出さない子ほど、注意深く見守っていたほうがいいかもしれません。
子どもと意思疎通ができたら、早めに心療内科を受診して治療を開始しましょう。
おわりに
ストレスの発散方法って人それぞれですよね。
歌って発散する、スポーツで発散する、誰かに聞いてもらって発散するなどなど色々方法がありますが、身体に悪影響な発散の仕方もあります。
過食になる、浴びるようにお酒を飲む、自傷行為をする…。
どれもその人にとっての発散方法なのですが、早くに改善することで継続を断ち切ることは可能です。
親の意識一つで子供を救うことができるかもしれません。
抜毛症に苦しむ方が、一人でも減りますように。
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