空気が読めない・忍耐力のない子供が増加の一途。“叱らない子育て”“褒めて育てる”は本当に子供のためになっているのか。

教育

すぐキレる、ふてくされる、平気で嘘をつく、言い訳ばかりする、そのくせ打たれ弱い…。

こんな子供に誰が育ってほしいと思うでしょうか。

しかし今、このような行動をする子供が増加傾向にあります。

叱らないのは親の都合

育児方法としてもてはやされている「叱らない子育て」。

しかし「叱らない子育て」の本来の意味を理解せず誤った認識で行われていることが多いそうで、教育現場に携わる方々の話ではそれはそれは迷惑しているとのことです。

とにかく自分勝手で人のことを考えない、意思が通らないと荒れまくる、勝手に教室を出ていくなど日常茶飯事に起こるそうで、現場も頭を抱えています。

原因は家庭にあると考えられ、きちんと躾をされていないのでは?と疑われることもしばしば。

なぜそんなことになってしまうのでしょうか。

叱らない育児を勘違いする親

本来の叱らない育児とは、

子供自らが考え、正しい行いができるようにする育児法です。

そのために親は、

・感情的にならずに子供がやった行動を理解させ、諭すこと

・子供の意見に耳を傾け、どうすればよかったかを考えさせること

という手助けをしてあげます。

しかしいくら「叱らない」と言っても、命に関わる危険な行為をしたときや、他人に迷惑になる行為をしたときなどはしっかり叱ることは大前提。

しかしそれを「叱らない育児は何をしても叱らないこと」と勘違いしている親が非常に多いのが現代の日本の現状です。

そのように育った子供はやりたい放題になり、そのうち歯止めが利かなくなります。

幼いうちは修正ができたとしてもある程度まで大きくなると修正は難しく、ずっと苦労を強いられる子供も。

善悪の区別ができている上での叱らない育児ならまだしも、いいも悪いもないうちからのこの子育て法にはかなりの注意が必要だと思います。

他人の目を気にする育児を強いられる親

叱らない育児を実践している人の中には「“人の前では”叱らない育児」という人もいます。

子供の虐待問題が深刻化している現代においては、子供を公共の場で叱ることで「虐待では?」と疑いの目をかけられかねず、仕方なしにその場はグッとこらえて家に帰ってから先ほどの行いを注意する、というようなスタイルをとる人も多いです。

しかし幼ければ幼いほど、時間が経ってから注意しても「何のこと??」と効果がありません。

本当はやってすぐに注意できればいいのでしょうが、世間の目が気になる、など親たちの心も複雑です。

昨今の叱らない育児・褒める育児というブームは、本当に子供のためなのか甚だ疑問を感じています。

忍耐力のない子供が急増中

昔に比べて今の子は忍耐力がないと言われており、特にここ数年、その差が顕著に表れ始めるようになりました。

特に、幼稚園から小学校に移行する段階でうまくいかない子が増え、毎年問題となっています。

小1プロブレム

家では叱られずにのびのび、幼稚園でもゆるーい規律の中でやってきた子供達が小学校に入学すると、途端に問題児化することも珍しくありません。

小学校になると勉強の時間、休み時間、給食の時間…など、時間の区分が幼稚園以上にはっきりしていて、園のように遊びながら学ぶのではなく決められた時間椅子に座りじっくり勉強をすることを求められるので、そのギャップについていけない子が多いそうです。

決められたスケジュールの中で決められたことをする。

これに耐えられず授業妨害をしたり、教師に暴力・暴言を吐いたり、教室から勝手に出ていったりと問題行動を起こす児童は増加傾向にあり、背景に「叱らない育児」「褒める育児」が影響しているのではないかと言われています。

これらすべての行動の根源が「叱らない・褒める育児のせい」とは思いませんが、叱る場面で叱っていない、我慢させるべきところで我慢をさせていない、注意をせずに誉めているだけ、という幼いころからの積み重ねが、他の6歳児との差として出ているんじゃないかな、というのは思います。

出典:文部科学省 「幼児期の教育と小学校教育の接続について」より

上の資料は文科省のHPから抜粋したものですが、小1プロブレムの主要因の一つに「家庭によるしつけ」を挙げています。

一部の児童のために他の児童が授業時間を削られることもあると聞きます。

好きなように子育てしたらいいとは思いますが、他の子に迷惑をかける行為はきちんと家庭でも叱ってほしいと思います。

小学生の暴力が急激に増えている

気になることは小1プロブレムの他にも。

それは小学生による暴力が年々増えているということです。

平成20年には、学校の管理下における暴力発生件数は5,996件だったのに対し、平成30年ではなんと34,867件。

10年で5.8倍も暴力が増加しているのです…。

出典:文科省「平成30年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」より

暴力の増加率で言うと小学校1年生が群を抜いて伸びているそうで、幼稚園から小学校へ上がったギャップ、プレッシャー、孤独感などの色々な感情を上手く自己処理できずに暴力という行為に出てしまっているのではないかと考えられます。

子供でも空気の読みは大切

子育てしていると色々なママさんやお子さんと知り合う機会が多く、その家庭の子育て法にびっくりすることもあれば共感することも多々あります。

子供の数と同じだけそれぞれの育児法はあると思いますが、中でも私は「空気を読む力を養うこと」は子供の将来のために欠かせないのではないかと考えています。

その場を察する訓練は幼少期から

「子供でも空気を読む力って絶対いるよねー」と意見の一致するママ友が私の周りには多いのですが、皆さんの周りはどうでしょうか。

中には「子供は子供らしく遊びまわっていればいい」「そんなこと小さいうちからやる必要ない」とお思いの方もいらっしゃると思います。

もちろん、幼いうちから大人のような細かな空気の読みはいりません。

しかし「雰囲気を察する力」は「〇歳になったから」といってすぐに身につくものではないので、こちらの言葉を理解し始めた頃から少しずつ教えていく必要があります。

この場で騒いでもいいか、大きな声を出していいか、走り回ってもいいかなど、状況に応じた立ち居振る舞いは大人だけでなく子供にも必要なこと。

病院で大騒ぎしている、ファミレスで走り回っている、図書館で大声を出しているなどの行為は、周りにとっては迷惑そのものです。

「子供だから仕方ない」で片づけようとする親は、本来行わなければならない「しつけ」を放棄しているに等しく、それは「叱らない育児」ではなく「育児放棄」と言えるでしょう。

空気が読めない子供は子育ての仕方に問題があることが多い

子供は生まれた時から身近にいる親に色々なことを学びますが、空気を察するという意味では親の「表情」がとても大切になってきます。

何をしても笑っている親だと、子供は親の感情を汲み取れずに善悪の区別がつかないままに成長していきます。

人に嫌なことをしても笑っている親。

危ないことをしていても笑っている親。

迷惑をかけているのに笑っている親。

これで子供は何を学ぶでしょうか?親は何をしても怒らない、ということだけでしょう。

子供は小さなうちから親の目、口調、表情から感情を読み取ろうとします。

親で感情を汲み取れるようになったら次はお友達や先生…と感情を読む範囲をどんどん広げ、経験を積んでいきます。

なぜ子供でも空気が読めたほうがいいのか。

それは人間関係を上手く構築するために必ず必要になる能力だからです。

そしてその能力は時間をかけて培うもので、今日明日でどうにかなるものではありません。

だからこそ幼いうちから、年相応の場の認識能力をつけていくのです。

時代はAI。

ただ勉強ができるだけじゃ生きていけません。

自己肯定感が強いだけでも生きていけません。

これからの時代を生き残るためには、有名大学卒業でもなく、難関な資格取得でもなく、何より信頼ができ、人と高度なコミュニケーションが取れる人間力が必須要件です。

つまり、人間の本質部分が優れている人が求められる時代になります。

自分勝手で協調性がない、場の雰囲気を察することが苦手、というのは社会に出た時に致命傷になるかもしれません。

【余談】子供は親で実験をしている

長年、個人塾を経営されてきてたくさんのお子さんとじっくりかかわってきた先生から興味深いお話を聞きました。

「どこまでがOKでどこからがNGか。子供はいつも親を試している。

その境界を子供達は日々の生活から学んでいくのだけれど、最近の親は叱らない育児等で感情を表に出さないことを良しとしているため感情が読み取れず、子供は親の空気が読めない。

親の空気を読む。実はそれはすごく大切なこと。

親の地雷がどこにあるかを日々一歩一歩子供は探している。誤って地雷を踏んでしまった子供は『それはダメなんだ、次回から気を付けよう』という学びの機会を得る。

でも子供が何をしても笑っているような親だと何がいいのか悪いのか子供自身の判断がつかず、結果外に出て他人の地雷を平気で踏んでしまうような人間になる。

人それぞれ怒りのポイントは違ったとしても、人の心に少しずつ近付きながら心地のいい関係を保つというアプローチの仕方をまずは親で試させてあげないといけない」

というものでした。

あなたの心にはどう響いたでしょうか。

子育ての最終ゴールは…

子育ての最終的な目標は『子供が自分で生きていく力を身に付けること』。

しかし、ようやく社会人になったと思った子供が些細なことで会社を辞め、引きこもるケースは後を絶ちません。

耐性のない社会人が現代には溢れている

社会に出たことのある人ならお分かりかと思いますが、学生までと違い、本当にシビアな世界です。

営業なら営業成績を常に上げていなければならない。

事務なら仕事が円滑に回るようにデータ管理や従業員の用事を手早く・ミスなくこなさなければならない。

接客業ならお客様に快適に過ごしてもらえるように細かな配慮を怠らない。

とにかく気を遣う上、頑張ってもミスに繋がったり、成果に結びつかないことも多々あります。

自分では頑張っているつもりでも、きちんとした結果が出ていないのであれば状況は厳しい。

当然上司から注意を受けたりするのですが、「人から注意を受けること」に慣れていない人はそれだけでプライドが傷つき、出社できなくなってしまうようです。

叱らない子育ての弊害は社会人になってからが顕著

自分の気の合う人とだけ付き合っていればよかった学生時代とは違い、社会人になると嫌だと思う人間とも人間関係を構築していかなければなりません。

常に穏やかで褒めてくれる人間ばかりが周りにいるわけではありませんから、幼いころから叱られず、褒められてばかりの育児をされてきた子供にとっては社会はまさに地獄です。

社会人になってから3年以内に離職する率は3~4割。

この大事な最終段階でつまづき立ち直れなくなる人、転職を繰り返して生活が安定しない人が本当に多く、本当にもったいない。

とは言え、褒められることはあっても叱られたり注意されたりすることがほとんどなかったのであれば当然の反応と言えるのかもしれませんね。

しかし、人間は生きていくためには働かなくてはいけません。

子供時代より大人になってからの時間の方がはるかに長い人間にとって、大人になってからのことに焦点を合わせた育児法が必要不可欠ではないか、と私は思います。

子供のためを思うなら「叱らず褒めてばかりの育児」よりも、小さいうちから叱られることもあること、間違いを指摘されることもあること、我慢しなければならないもあること、人のために動かなくてはならないこともあることなど、子供にとってマイナス感情になるようなことでもあえて親はフォローせず、子供に経験をさせることが大切なのではないでしょうか。

そして、ヘコんだ心の解決方法、納得がいっていない時の自分の感情をどうしたら上手く自己処理することができるのかなど、自分を立ち直らせるための思考を学ばせることも同じく重要なのではないかと思います。

立ち直り方を知らない人間ほど、脆く・危うく・怖いものはありません。

子供や自分に心地のいい方法だけをチョイスするのではなく、生きていくために必要な耐性を幼いうちからつけていくことは、子どもの将来を大きく左右すると言えるのではないでしょうか。

おわりに

子育てに正解はないとわかりつつ、自分の育児に不安を持って情報を集めようとするのはどの親もそうなのかもしれません。

「こういう方針で育児をする!」と決めていたとしても、途中で違うな…と思ったら方向転換する勇気も絶対必要だと思います。

子供に降りかかる厳しい場面を親が先回りして排除することは、愛情ではなく親の自己満足です。

もっと言えば、子供の学びの機会を無理に奪う、虐待に近いことです。

ピンチこそ学びのチャンス。

親がそう捉えることが好転のチャンスだと思っています。

年齢が上がれば上がるほど立ち直りに時間がかかることを親は忘れてはいけません。

「小さいから」「まだ早いから」が後々の大きな差に繋がっていきます。

 

「叱る」か「叱らない」かどちらが正解?と聞かれれば答えはわかりません。

これは絶対いい、と言える方法が子育てにはないからです。

 

人・本・ネットなどから得る情報は全て「参考程度」。

参考にはするけれどお子さんのタイプやご自身の考えを優先させて実践するべきです。

子育てにマニュアルなんてないのですから、人がやっていることを我が子に当てはめる必要なんてありません。

親が本気で考え「これがいい」と思ったことが後々失敗という結果になったとしても、「あの時本気で考えた結果だから」と納得いくと思います。

子育てのブームとか絶対乗っちゃダメ。

「叱らない育児のブームに乗って失敗しました…」って相談、実際にあるんですよ。

「これがいい」とされていた育児法が、後々レッテルを貼られることなんて珍しいことじゃないですから。

 

子供にとって一番いい方法は何か。

そこでたどり着いた答えがそのご家庭の最高の答えなんだと思います。

 

お互いに育児頑張りましょう!!

コメント

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