サッカーと言えば華麗なキックと共に豪快なヘディングも魅力の一つ。
サッカー選手に憧れて幼稚園児や小学生もサッカーチームでプレイする子も数多くいる中、子ども達のヘディング練習に、いま変化が訪れています。
ヘディングの危険性
ヘディングが脳に相当なダメージを与える懸念は、かなり前からありました。
かなりのスピードで飛んでくる重さ450gほどのサッカーボールを、頭にぶつけるのですからダメージがあるのが当たり前かもしれません。
サッカー選手のシュートスピードは平均で約100㎞。
かなりの早さで飛んでくるサッカーボールをヘディングすることにより、脳震盪(のうしんとう)を起こす可能性が指摘されています。
転倒や外傷など、頭部へ何らかの衝撃が起きたことにより脳が大きく揺さぶられ、一時的に起こる脳の機能障害のこと。衝撃で意識を失ったり、記憶が消失したり、頭痛、吐き気などの症状が見られます。酷いときにはこのような症状が数日~2週間程度続くこともあります。
脳震盪の症状が出ている間は、脳へのダメージが継続しています。
万が一その状態でプレイして再び脳震盪が起こった場合、さらに症状が重くなる傾向にあることがわかっています。
海外の動きは…
成長期の子どもは身体がまだ未熟な分大人よりも脳にダメージを受けやすく、身体がある程度成熟するまではヘディングを避けるべきではないか……という意見は実は20年以上前から出ていました。
日本では今年に入りようやくヘディング練習に対するガイドラインを日本サッカー協会が設定しましたが、海外ではすでにヘディングを禁止している国があります。
アメリカでは…
米国サッカー協会は2015年に
11~13歳以下……練習でのヘディングを制限
と設定しています。
「サッカーをする5万人近い高校生が頭部外傷を負った」として、アメリカの高校生の親達が国際サッカー連盟(FIFA)などを相手取り、提訴したことも関係しているようです。(のちに敗訴)
イギリスでは…
イギリスでも、イングランドサッカー協会が2020年に
18歳以下……段階的に制限を解除
とガイドラインを改定しています。
12歳以下は「最大5回までの練習を月に1回」…など、年齢に応じて回数や頻度を細かく設けているようです。
イギリスと同じくスコットランドでも11歳以下のヘディングは原則禁止となっています。
ヘディング見直しのきっかけ
ヘディングをめぐる様々な議論が世界中で起こっていますが、きっかけの一つとなったのは一昨年イギリスで発表された調査結果でした。
イギリスのグラスゴー大学の研究チームが、亡くなった元プロサッカー選手7000人以上を調査したところ、「元選手は一般の人より認知症などを患う可能性が約3・5倍高い」との結果が出ました。
これらの症状の直接の原因がヘディングかどうかは現段階では証明されてはいないものの、その疑いは拭い去れないとして注意喚起をしています。
脳が発達中の子ども時代からヘディングを繰り返すことの危険性を訴えたが昨秋発表した調査結果だ。ヘディングが原因という直接的な因果関係は証明されていないものの、その疑いは拭い去れないとして注意喚起をしています。
日本のガイドラインは
先月、日本サッカー協会がヘディングに関するガイドラインを発表しました。
内容を要約すると、
小学校低学年……空間を移動するボールに体を合わせる、軽量のゴムボールを額に当てる程度
小学校中学年……軽いゴムボールをキャッチ、ヘディングの練習をしてみる
小学校高学年……空中戦の状況に備えて2人で同時にジャンプ、空中のボールを手で取り合う運動、サッカーボールでヘディングの練習
とのことで、ヘディングを実際に練習できるのは小学校高学年からということです。
おわりに
スポーツにケガやアクシデントはつきものですが、できる限り避けたいですよね。
今回のガイドラインの制定は子ども達を守るためのもの。
これからサッカーを始めるお子さんはぜひ参考にしてみてくださいね。
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