つい先日、「下着の種類によっては、生殖機能に影響が出る」という、男性の下着と身体に関する興味深い記事が出ていました。
パンツの種類、精子濃度に影響 トランクス約25%高い結果に菊地亜美ら驚き
なんと通気性のいいトランクスの方がピッタリしたブリーフやボクサーパンツよりも精子濃度が25%も濃くなると、ハーバード大学の研究で報告されているそうです。
現代では、不妊の原因の半分は男性側にあることが確認されていますが、精巣の病気もその一因にあり、幼児期に発症することもあります。
今回は、親が知っておきたい精巣の性質や病気について調べてみたいと思います。
精子にいい環境は34℃くらい
精子は体内ではなく、身体の外にぶら下がった『睾丸』の中で作られます。
精子をいい状態で作り出し保存するためには、体内の温度(36℃~37℃)では不向きで、体温より2~3℃低いくらいが適温だといわれています。
だから体内ではなく、身体の外に出た陰嚢の中で精子を製造して品質を保っているのですね。
参照:https://www.ibujin.com/
先程の下着の話でトランクスを履いているほうが精子が濃いというのは、ここに由来しています。
ブリーフやボクサーパンツなどで隙間なくピッタリさせることは、睾丸を温めすぎてしまうことになり精子の状態が悪くなってしまう、というのが研究者の見解です。
精子は作られるまでに大体74日ほどかかるそう。
妊娠を望んでいる方は、3カ月くらい前からトランクスを履いて環境を整えておくといいかもしれませんね。
おたふくかぜになると精子が死ぬ!?
「男の子がおたふくかぜになると精子に影響が出る」と聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
私もずっと半信半疑だったので調べてみました。
結論からいくとおたふくかぜにかかったからといって全員が精子に影響を出すというわけではないようです。
おたふくかぜはムンプスウイルスというウイルスが原因で発症し、頭痛や食欲不振、倦怠感、発熱、そして耳下腺(耳の下あたり)の腫れが生じる病気で、発熱は子供だと微熱~39℃台くらいですが、大人になってからかかると40℃以上の熱を出すことが珍しくありません。
さらにおたふくかぜの合併症として、子供の場合は髄膜炎や脳炎、難聴などが出る場合があるのですが、大人はこれらに加えて男性の場合は精巣炎、女性の場合は卵巣炎を引き起こすことがあります。
熱が上がりすぎることと精巣炎になるリスクがあること。
この2点が精子に影響すると言われている要因ではないかと思われます。
精巣炎って何!?
精巣炎はおたふくかぜからくる場合が多く、おたふく風邪を発症した思春期以降の男性の約20~30%に精巣炎の症状が見られます。
通常、おたふくかぜを発症してから4~6日の間に精巣(睾丸)の片方が炎症を起こし、急激な腫れや痛みを伴います。
大半は一時的なもので、その後の男性ホルモンの分泌量や精子の形成には大した影響は見られないまま完全回復します。
しかし中には精巣炎と共に精巣上体炎を併発することがあり、きちんと治療をしないと将来の不妊に繋がる恐れが出てきます。
精巣上体炎とは
作られた精子を貯蔵しておく精巣上体と呼ばれる場所で細菌感染が起こっていることを指します。
精巣上体はちょうど精巣の真上に位置しており、精巣上体炎は精巣炎から併発することもあれば、尿道で増殖した細菌が逆流して感染することもあるし、性行為により発症することもあります。
適切な治療を受ければ数日~10日ほどで回復しますが、しこりが残ったり、睾丸の腫れも数カ月ひかないこともあります。
度々できたしこりが精子の通り道を塞いでしまっていることがあり、それで不妊になることがあるそうなので気になる場合は泌尿器科で調べてもらってください。
おたふくかぜは注射で予防できるので、未接種であれば受けておくことをおすすめします。
子どもに発生しやすい精巣の病気
次に、乳幼児期の子どもによくみられる精巣の病気をいくつかご紹介します。
精巣停留
男の子の精巣(睾丸)は、生まれてくる時までにおなかの中から陰嚢へと下りてくるのが正常なのですが、何らかのトラブルでおなかの中に留まってしまっている状態が精巣停留です。
陰嚢に睾丸部分が触れるかどうかで確認ができ、新生児の3~4%(未熟児は30%)は精巣停留のまま生まれてくるため決して珍しい病気ではありません。
1歳までに75%(未熟児は95%)の子が自然に睾丸が下りてくるため、生後1年を過ぎるまで経過観察をするのが通常です。
1歳を過ぎても下りてこない場合は、精巣停留の他に元々睾丸がない無精巣症も疑われるため、MRIや腹腔鏡を使用しておなかの中に精巣があるのかどうかを確認する必要があります。
精巣停留はそのまま放っておくとがん化したり不妊の原因となるため、2歳までに手術を行うのが望ましいとされています。
遊走精巣
精巣(睾丸)がおなかの中と陰嚢を行ったり来たりする状態を遊走精巣と言います。
経過観察がメインですが、陰嚢の中に精巣が長時間入っていない、左右の大きさに違いが見られる、6歳を過ぎても遊走精巣が続いている、といった場合には精巣の発育不良が疑われてくるので、精巣を固定するための手術が必要になってきます。
冒頭で触れたとおり、精巣は体内にあるよりも体外(陰嚢の中)の方が温度が適しています。体内に留まらせてしまうことは生殖機能の低下や、睾丸自体が悪性化に繋がる恐れがあるので子どもの身体をしっかり観察してあげましょう。
精巣捻転
精巣が回転して精巣と繋がっている血管がねじれてしまい、精巣への血流が止まってしまう病気です。
思春期に多い疾患ですが、2番目に多いのは乳幼児の時期です。
精巣は、通常であれば固定され自由に動くことはできないのですが、生まれつき固定が緩かったり、外部からの何らかの影響で動いてしまった場合などにより精巣が回転してしまうことがあります。
こうなると陰嚢に激痛が伴い、同時に腹痛や吐き気が出ることもあります。
この病気の怖いところは、早く治療を始めないと血液が止まってしまっている陰嚢が壊死しはじめ、最悪体外に取り出さなければならなくなること。
様子見なんてしている余裕はありません。
すぐに病院。何なら救急車を呼ぶレベルです。
発症から6時間以内に血流を回復しないと壊死が進み、その精巣は当然ながら一生使えなくなります。
お子さんの精巣の痛みには十分気を付けてください。
おわりに
子供ができない夫婦の50%近くは男性側に不妊の原因があるとされています。
思春期~大人の時期だけでなく幼児期にも精巣トラブルは起きることが多いので、お子さんの様子をしっかり見てあげることが大切です。
冒頭でお話しした通り、陰嚢は温めると精子に悪影響となるため、精子が製造され始める10歳を過ぎたあたりからはなるべくトランクスの方がいいかもしれません。
実際、男性不妊でクリニックを訪れた方が下着を変えただけで精子の動きが活発になったという報告は数多くあります。
子どもに妊娠はまだまだ関係のない話かもしれませんが、将来のために親が知識を持っておくことはとても大切です。
特に小さいうちはお子さんの様子をよく確認し、何か異常を感じた時はすぐに泌尿器科を受診してくださいね。
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