出会いと別れの季節、春。
この春、入園、入学を控えたお子さんも多いことでしょう。
新たなステージに胸膨らませる一方で、少なからず子供にも緊張感はあります。
その緊張がしばしば身体に表れることが…。
今回は子どもの“頻尿”についてお話していこうと思います。
頻尿とは
排尿回数は年齢や水分摂取量、膀胱の発達の度合いにより個人差があります。
幼ければ幼いほど排尿間隔は短く、排尿機能が備わってくる5歳頃から回数は大人とさほど変わらなくなります。
平均排尿回数
・0歳児…10~20回/日(1h~1.5h毎に排尿)
・1~2歳…8~10回/日(2h毎)
・2~3歳…6~10回/日(2.5h毎)
・3~4歳…5~9回/日(3h毎)
・4~12歳…4~8回/日(3~6h毎)
・成人…3~6回/日(4~8h毎)
子どもが突然頻尿に!?
子どもの頻尿は、ある日突然発症することが多いようです。
その多くは、膀胱炎や心因性ストレスが原因となっています。
膀胱炎
頻尿に加え、排尿痛を訴えるようであれば膀胱炎を疑います。
膀胱炎とは、膀胱の中に入った細菌が原因で膀胱内に炎症が起こっている状態で、排尿時に痛みを伴い、全てで終わった後でも残尿感が残ります。
この残尿感が原因で頻尿になっていることがあるのです。
治療法は?
小児科または泌尿器科を受診し、尿検査をします。
膀胱炎だと確定した場合、抗生物質を使って治療していくことになります。
尿を出す頻度を上げることで治りが早くなるので、治療中はなるべく水分を多めに取りましょう。
子どもの膀胱炎は自然治癒することも多い反面、重症化すると細菌が血液に乗って全身を回り、最悪死亡に至るケースもあります。(膀胱炎が原因となり腎盂腎炎・敗血症を誘発した場合など)
「そのうち治る」と放置せず、きちんと医師に診てもらうことが大切です。
心因性ストレス
子どもは大人が考える以上に繊細なところがあり、ちょっとのことが引き金となり精神に負担がかかってしまいます。
最もかかりやすいとされるのは特に小学校に入学したてのお子さんで、環境の変化や「小学生になった」というプレッシャーから頻尿を発症する子が珍しくありません。
頻尿を発症しやすい最大要因
①入学、進級、新学期
②大きなイベントの前(運動会、発表会、試合、試験など)
③排尿に関すること(おもらしやおねしょなど)で叱られた経験
頻尿は起きているときに起こる現象で、夜中に目覚めて何度もトイレに行くということはほぼありません。
原因が上記①②の場合は、その場に慣れて緊張がほぐれ始めた時やイベントが終了した後から徐々に改善する傾向が多く見られます。
このように頻尿が一過性のものであれば「単なる緊張」と結論づけることができますが、いつまでたっても改善せず、授業中に頻繁にトイレに行ったり出かけた先でも常にトイレを探しているなど、日常生活がトイレで支配されるような傾向があれば医師に診てもらう必要が出てきます。
心因性頻尿の治し方
子どもが頻繁にトイレに行く姿を間近で見ている親御さんの中には、心配になる反面「そんなに行かなくていいでしょ!さっき行ったところなんだからもう出ないよ!!」とつい言ってしまった(言いたくなってしまった)という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
お気持ちはよくわかるのですが、お子さんの頻尿を早く治したいと思うのであれば環境づくりがとても重要になってきます。
それには家族の協力が欠かせません。
辛いのは誰より本人
頻尿になって辛い思いをしているのは周りでその姿を見ている家族だけではありません。
誰より辛い思いをしているのは当の本人なのです。
それを家族からも責められてしまっては八方塞がりになってしまいますます悪化に転じてしまいます。
そうならないためにも本人への声掛けは意識しましょう。
・頻繁にトイレに行くことについて「どうして?」「さっき行ったし行かなくていいよ」などのネガティブ発言は控える。
・出かける際には「トイレに行きたくなったらすぐにコンビニで借りようね」「こことここにトイレがあるから寄っていこうね」など、トイレに協力する姿勢を見せる。
周りのその行動が子どもの心を軽くします。
大人だってそうですが、一人で悩んでいるより共感してもらえる人がいてくれたほうが心がスッと軽くなりませんか?
子どもも同じです。共感して協力してあげること、見守ってあげることが何より改善の近道になります。
改善が見られない、悪化している場合はすぐに病院へ
とは言え、改善が見られないお子さんもたくさんいます。
病院を受診するタイミングとしては、1h毎以上にトイレに行く、1日平均10回以上の排尿があるなどが目安となります。
可能であれば3日間くらいの期間でいいので排尿記録(頻度や量)を付けると、傾向が可視化できて今後の治療に有効です。
記録は病院に持参しましょう。
どんな検査をするの?
まず尿検査をして尿に異常がないかを確認します。
これまでの経過を問診され、それによって身体的な病気なのか心因性のものなのかを判断していきます。
場合によっては採血や超音波検査、MRI検査が必要なこともありますが、それは重度な場合に限られるようです。
治療法は?
頻尿の治療法としては、薬剤治療、行動療法があります。
頻尿は膀胱がかなり過敏になっている状態ですので、その過敏さを和らげる薬を使うと効果がみられます。
それと同時に、排尿に行く回数を徐々に減らすための訓練(練習)も行われます。
例えば今まで1日12回トイレに行っていたのを10回に減らすとか、1時間おきに行っていたのを1時間半おきにしていくなど、少しずつ少しずつトイレに行く回数を減らしていきます。
薬でも生活指導でもどうにも治らない頻尿の場合には、下腹部に低周波のシールを貼る治療法も有効です。
これを干渉低周波治療といい、膀胱、膀胱周辺の排尿筋、骨盤底筋などを低周波で刺激することにより頻尿の改善が期待できるというもの。
1回約15分程度低周波で刺激させ、それを3カ月ほど続けることでかなり改善します。
頻度は医師と相談の上ですが、大体週1~2回の通院が一般的なようです。
痛み、副作用などの苦痛が伴わないことも大きな魅力で、お子さんにも安心して治療していただけます。
【余談】次女が頻尿になりました
我が家の次女も頻尿に苦しんだ一人です。
きっかけは小学校入学でした。
4月半ば頃から急に異常なほどトイレに行くようになり、ただ事ではない…と感じ、本人に「どうして急にそんなにトイレに行きたくなっちゃったの?」と聞くと、担任の先生の一言がきっかけとなっていたことがわかりました。
入学して間もなくの頃、生活指導をしていただいているときに、「学校では休み時間にトイレを済ませます。授業中はトイレには行きません」と言われたようなんですよね。
「授業中にトイレに行ってはいけない」…その一言で彼女の中の何かが反応し、それからは授業が終わるたびにトイレに通う日々…。
トイレに行った直後でも「またトイレに行きたくなったらどうしよう…」と不安が勝り授業に集中できないようでした。
「授業中にトイレに行きたくなるから学校に行きたくない」とまで言い出したため、娘の現状と、どうしてもの時には授業中でもトイレに行かせてほしいと先生にお手紙を書いてお伝えしました。
「授業中でもトイレに行ってもいいって先生が言ってくれてるから」と伝えましたがしばらくはまだ治る兆しはなく、「行きたくなったらいつでもいったらいいんだからね」と繰り返し娘に伝えていたら、徐々にトイレに行く回数は減り、夏休み頃にはかなり改善しました。
結局娘は病院には行かずに自然治癒という形で改善しましたが、大きなきっかけもないのに突然…とか、症状が長期に渡り改善されないとか、痛みや発熱がある場合などは迷わず病院に行かれたほうがいいと思います。
どのようなきっかけであれ苦しんでいるのは子どもですから、親としてできる限りのことはしてあげたいですよね。
おわりに
我が家の次女の体験談をお話ししましたが、長女のお友達でも小学校入学をきっかけに頻尿になった子がいて、家から学校まで(約30分)もたずに途中のコンビニで毎日行き帰りにトイレを借りていました。やはり夏休み頃まで続きましたがそれ以降自然に改善したそうです。
長男のお友達(5歳)はマラソン大会の半月ほど前から突然頻尿になり、夜もおむつをしないと不安で眠れなくなるほどだったと聞きました。その子もマラソン大会が終わってしばらくしたら元通りになったそうです。
このように、割と子どもは頻尿になりやすい傾向があるようです。
頻尿になっている最中は親としては不安が増幅しますが、「いつか治る、治療法がいくつもある」と思って親は焦らずに見守っていましょう。
お子さんの頻尿が早く改善されますように。
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