児相への相談数増も虐待死は減少。日本の“子ども虐待”の実態とは。

育児

たびたび目にする子どもへの虐待のニュース。

毎年のように児相への相談件数は増えており、「こんなにも虐待をする人間がいるのか」と悲しくなりますよね。

よく調べてみると色々なことがわかりましたので、参考にしていただければと思います。

虐待の実態

近年の虐待を調べてみると、世間の印象とは違うところがいくつか見つかったため、ご紹介したいと思います。

虐待の加害者は…

「大人が子どもを虐待」と聞くと、加害者として真っ先に浮かぶのは「母親の彼氏」や「内縁の夫」などの「血のつながりのない父親」ではないでしょうか。

近年の子どもの虐待死のケースではそのような人たちが加害者として報道されることが多かったため、私達の脳にも「虐待=継父」という図式が自然にできあがってしまっていますが、実際には実父・実母から受ける虐待が圧倒的に多いのです。

少し古いですが、厚労省のH26年度のデータを見てみましょう。

こちらは子どもを虐待した加害者の内訳です。

                                       厚労省HP 「児童虐待の現状」より

それによると、平成26年度の子ども虐待の加害者は、実母が52.4%、実父が34.5%で、虐待全体のおよそ9割を実の親が占めているということになります。

私達が感じているいわゆる血のつながりのない父親からの虐待は全体の6%ほどで、レアケースだということがわかります。

大々的に報道されるのは継父のことが多いように感じますが、実際にはこれだけの開きがあるのです。

虐待の種類

気になるのは、実父、実母がどのような虐待をしていたのかということ。

虐待は4つに分類されるそうなのでまずはそちらを見ていきましょう。

虐待は4種類

                                       厚労省HP 「児童虐待の定義」より

実母はネグレクトや心理的虐待で、実父は身体的虐待や性的虐待で子供を苦しめる傾向があるようです。

父母が虐待に至る大きな要因

なぜ我が子を虐待してしまうのか調べてみたところ、実父と実母では虐待に至る理由が違うことがわかりました。

父親

父親は育児に対する耐性が母親より乏しく、子供の「泣く、騒ぐ、走り回る」などの特性が苦手で、自分の思う通りに子供が動かないことにいかないことにイライラしやすい傾向があります。

加えて経済状況が厳しいとイライラを子供に向けてしまうことが増えます。

・収入が不安定

・最終学歴が高卒以下

・父親自身が若年

・子供の人数が2人以上

上記の要件に当てはまるほど、虐待の傾向が強くなっているようです。

☆参照:父親の虐待的子育てに関連する要因の検討

母親

母親は、ゆとりのないときに虐待をしがちになります。

精神面、体力面、経済面などに不安や不満がある場合、それがストレスとなり子供に当たってしまう傾向が見られます。

母親が虐待に至る要因は

・母親の母性の欠如、未熟さ

・失業や低収入、精神的孤独

の2種類があると考えられており、従来は母親の虐待は「母親の性格や母性の欠如」が有力だとされていたようですが、現在では「収入や孤独」などの環境的要因が強いのではないかとの声が多くなっています。

☆参照:母親による児童虐待の発生要因に関する実証分析

児相への相談件数と虐待死者数は反比例

昨年11月の厚生労働省の発表によると、2019年度に全国の児童相談所(児相)が対応した虐待相談件数は19万3780件だったそうです。

児童相談対応の内容_16次.png                       参照:統計データ | 子ども虐待について | オレンジリボン運動 – 子ども虐待防止 (orangeribbon.jp)

この数字は1990年度の集計開始以来最多であり、前年度からの増加幅も過去最大となっています。

この数値、すごい数ですよね。

もう少し詳しく調べてみると、様々なことがわかってきました。

虐待の大半は…

「心理的虐待」が10万9118件で、相談件数の約6割を占めた2019年度。

前年度に比べて心理的虐待の相談は2万件ほど増加しており、その理由として「面前DV」の増加と、それを警察が児相に通告する件数が増えていることが挙げられます。

面前DVって何?
父親が母親を殴りつける、母親が父親を激しく罵るなど、直接子供に危害を加えていなくても子供の目の前で行われる両親の暴力・暴言行為は、立派な児童虐待行為とみなされます。

 

面前DV増加の背景には、コロナによる自宅待機、減給、解雇などで家族が顔を合わす時間が増えたこと、収入が不安定になったことによる不安や焦りがストレスとなってその矛先が家族に向かってしまう、などが考えられます。

昨年度でこの増加ですから、コロナで大打撃を受けている今年度はもっとひどい数字になるのではないかと予想されます。

心理的虐待の次に多かったのは「身体的虐待」で4万9240件(前年比9002件増)。

これもコロナの影響によるものなのでしょうか…。

先程のグラフからもわかる通り、大人から子供への暴力は、残念ながら増加傾向にあるようです。

身体的虐待増加に伴う虐待死の現状

身体的虐待が増加しているということで気になるのが、虐待されている子供が死に至っていないかということ。

警視庁のデータによるグラフを見てみましょう。

警察庁によると、2019年の摘発事件の内訳は「身体的虐待」が1641件と圧倒的に多く、続いて「性的虐待」246件、「心理的虐待」50件、「ネグレクト」が35件の計1991人でした。

虐待により子供が亡くなる数は年々減少傾向にあり、2019年は54人(2008年の98人から約半分)。

54人の内訳は、無理心中が21人、生まれた直後が8人、その他が25人。

実は、毎年起こる虐待死の中で最も多いのは無理心中と出産直後です。

原因は望まない妊娠をしてしまったこと。

気付いた時には中絶できる時期を過ぎていた、誰にも相談することができなかったなど、母親の環境や精神状態が虐待死を招いているのが現状です。

実際に0歳児の死は5割近くを占めており、母親による虐待、母親との心中がほとんどという状況。

今年度はコロナで外出自粛になったこともあり、若年者(中・高校生など)からの妊娠相談が相談窓口(にんしんSOS)や産婦人科などに過去最多の件数でかかってきているそうで、望まない妊娠による虐待死に繋がるのではと懸念されています。

心中・産後直後の死を除く虐待死は25人。

どのような亡くなり方をしたのかはわかりませんが、月に2人は虐待により幼い命を奪われているということ。

心中・産後すぐの虐待死を含めると週に1人は命を落としていることになります。

相談件数は過去最多。

でも虐待死自体はかなりの減少。

それでも命を奪われる事件は後を断ちません

フィンランドでは虐待死0

日本では度々「公園に生まれて間もない赤ちゃんが…」とか「公衆トイレに赤ちゃんが…」などの報道がありますが、フィンランドではそのような事態はほぼ0(ゼロ)だそうです。

日本との違いは何かと言うと、

・中学・高校の保健体育の授業で、保健師さんが「望まない妊娠をしてしまったらどうしたらいいか」という指導をしている

・もしそのような事態が起こった際、両親に伝わることなく学校の保健師さんに相談ができる体制ができている

・無料で避妊具(コンドーム)を自治体から配布してもらえたり、万が一中絶に至る際には無料で手術が受けられる

 

など、日本にはないサポート制度がしっかりとできているそうです。

望まない妊娠や虐待は日本だけではなくフィンランドにもあるのでしょうが、周りのサポートがしっかりしているため、日本のように生まれた直後にどこかに捨てられるなどの悲惨な最期を迎える子が極端に少ない(いない)とのこと。

一定数の虐待や心中が毎年起こっているのですから、幼い命を守るためにも、そのお母さんを守るためにも、日本もできうる限りの体制を整えてほしいと思います。

親にも目を向けて

子どもの虐待のニュースは聞くたびに胸が痛いという方も多いでしょう。

明らかな暴力、心をえぐる暴言、行き過ぎたしつけから子供を救いたいと思う気持ちは誰の心にもある感情だと思いますが、一方で子どものしつけなどに最も過敏になっている現代で、周りの目を気にしながら子育てをしていかなければならない親にも目を向けてほしいと思います。

ーーー実際にあった例ーーー

うちの長女が幼稚園の頃、未就園児の子とその親が幼稚園に遊びに来るという企画があり、当時3歳だった次女を連れて参加したことがありました。

イベントの最中に一緒に参加していた未就園児の子を脇に抱えて廊下へ出ていくお母さんがいらっしゃり、「トイレに連れていくのかな」と思っていた矢先、廊下の方から鈍い音が…。

言うことを聞かないわが子をお母さんが廊下に放り投げたようでした。

慌てて保育士さん達が廊下に飛び出て、泣きわめくお子さんとお母さんを違う部屋へ…。

後から聞いた話だと、お母さんは子育てに真面目な方で、子供のためにとこの企画にも参加したのですが、みんながいる雰囲気が楽しかったのか子供が言うことを聞かなかったそうです。

「みんなができていることができない…何で…何で…」とわが子に焦りと苛立ちを感じ、あのような行動に出たとか。ちなみにその子は女の子でした。

しつけがちゃんとできていないと思われるのでは…というプレッシャーや周りに気軽に相談できる人がいなかったことも要因だったようで、そのお母さんは別室で泣いていたと聞きました。

もちろん、このお母さんがやったことは許されることではありません。

「何でそんなことするんだ」と、お母さんを責めることは簡単です。

だけど誰かがお母さんの苦しみに寄り添ってあげなくてはお母さんが潰れてしまいます。

お母さんを守ることは結果的に子どもを守ることに繋がるのですから。

世間の「親のくせに…」という目は、親からすると本当に辛いものがあります。

時には子供を泣かせっぱなしにしたくなることもある。

思わず手をあげてしまうことだってある。

嫌な言葉が口から出てしまうことだってある。

そんな自分が嫌になり、自信を無くし、子供の寝顔に涙して、「明日は頑張るぞ」と気合を入れて…。

必死に子育てをしていたら誰もが一度は経験することなのではないかと思います。

子どもに対する行き過ぎた行為はもちろんNGですが、周りの大人の過敏すぎる反応もどうかな…と複雑な思いです。

おわりに

「児相の相談件数増加=虐待死も増加」と誤解をしている人が割と多いのですが、実際には減っていると知って驚いた方もいらっしゃるのではないかと思います。

子どもを守るための法律が制定されたり、虐待では?と思える行為を誰でも気軽に通報できたりと、効果が発揮されているのでしょうね。

つい先日、元関脇・嘉風関(現・中村親方)の離婚調停中の妻が、子供を虐待していたのではないかというニュースが日本中を駆け巡りました。

「目ぇつぶれんぞ!」元関脇「嘉風」妻の凄絶な虐待 小学生の娘の目にかゆみ止め薬を…証拠音声を公開

生々しい音声も公開されており、これが母親の言動なのかと耳を疑う内容です。

一般的に身体的虐待の加害者の多くは父親、心理的虐待の加害者の多くは母親だと言われています。

どちらの行為も子供を傷つけることになりますので、冷静さを失わずに子育てをしたいですね。

 

虐待で苦しむ子どもが一人でも減りますように。。。

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